コロナ禍にあって介護人材不足は更に深刻化している。かといってハローワークや社会福祉協議会といった公的側面が強い機関に頼っても、ほとんど応募者は来ない。
やむなく、多額の費用を投じて民間の人材紹介会社を活用すれば、多くの場合、当面の人材は確保できる。しかし、そればかりに依存している介護事業者は、経営者としての「資質」がないのではないだろうか。退出して頂いてもいいのかもしれない。
確かに、本人の個人的な事情で急に退職者が出るなど思いがけない事態において、人材紹介会社を活用することは妥当であろう。その意味では、これらの社会的意義や役割は充分に評価されるもので、否定するつもりは全くない。
しかし、来期採用枠や長期間の欠員補充など、必ずしも緊急性を要しない場合でも、安易に人材紹介会社を活用している事業者も少なくない。総じて、このような事業者は充分なリクルート活動・努力もせず、「単純に金銭で人材を確保すればいい」と考えているのではないだろうか。だとすれば怠慢と言わざるを得ない。
厚労省のデータによれば、このような人材紹介会社へ支払う手数料などのコストについて、介護事業者の約7割が「経営上負担となっており、高いと考える」と回答している。
しかも、これらを経由した介護職員の離職率をみると、3ヵ月以内が28.2%、6ヵ月以内が38.5%と非常に高い。まして、事業者が人材紹介会社へ支払う「介護職員」の手数料は、1件あたり全国平均で約50万円である。
これらのデータだけを見ても、人材紹介会社に依存し過ぎる人事マネジメントは非効率であると容易に理解できる。そして、それが常態化してしまうと経営が苦しくなることも想像できるはずだ。
また、税金や保険料による介護報酬を主な収入としている介護事業所の財布から、人材紹介会社へ手数料が流れていくことにもなる。つまり、事業者が努力を怠らず自前で人材を確保できていれば、既存職員の待遇改善、職場環境の向上などの費用を工面できる。
先の厚労省のデータでは、採用人数全体に占める採用経路別の割合について、人材紹介会社が28.3%、公共職業安定所(ハローワーク)が25.8%となっている。介護関連ビジネスの中でも、人材紹介業は利益に結びつきやすい市場であると言えよう。
繰り返すが、筆者は人材紹介会社を批判するつもりは全くない。むしろ、深刻な介護人材不足と言われながら、十分なリクルート活動をしない事業者が増えつつあることに危機感を抱いている。このような事業者は、介護業界の足を引っ張らないよう今一度よく考えて頂きたい。