2020年7月8日 経済同友会が遠隔教育推進を提唱 「小・中学校の子供の学びを止めないために」

経済同友会の教育改革委員会は、ポストコロナの時代を見据えて、「小・中学校の子供の学びを止めないために~遠隔教育の推進に向けた意見~」を発表した。効果のある遠隔教育は正規の授業として認めることや一人一台端末の環境整備を早急に整備することなどを提唱している。

新型コロナウイルスの感染拡大により、学校休業という緊急事態に対応するための臨時的措置として、教育現場でICTを活用した遠隔教育や学習支援が展開されている。コロナ禍での学校休業による子供の学習格差が広がりつつあることを受け、各地の教育委員会や学校にヒアリング調査を行ったところ、小・中学校の現場では試行錯誤しながらICTを活用した遠隔教育での学びを積み上げていることがわかった。

今後、新型コロナウイルス感染症の第二波や第三波が到来することを想定すると、対面での学校教育に、ICTを活用した学習を組み合わせた形を「教育のニュー・ノーマル」とすることが求められる。

再び「子供の学びを止めない」ために、遠隔教育を推進する際のボトルネックを把握し、具体的な処方箋をとりまとめたもの。経済同友会では、今後はさらに各方面の意見を集め、提案の確実な実現を目指して発信・行動していく方針。

意見のポイントは、1)遠隔授業の要件を見直し、正規の授業として認めるべき、2)一人一台端末の早期実現および家庭への持ち帰りを可能とする環境整備を、3)小中学校で使用するオンデマンド教材や教育委員会が作成する動画・コンテンツは著作権者の許諾を原則不要に―の3項目。

 

遠隔授業を正規の授業に

遠隔授業については、教員が配信側にしかいない「スタジオ型」遠隔指導やコンテンツを活用した指導は「正規の授業」として認められていない。このため、意見では、教員と生徒が直接対面していなくとも授業と同等の教育効果を有する場合には正式な授業として認め、恒久的な制度化を図るべきとしている。また、小中学校の遠隔授業では、「同時双方向性」が確保されていることが必須要件となっており、これを緩和すべきだとしている。

 

端末は秋頃までに一人一台に

端末については、新型コロナの第二波、第三波や冬季の再流行を想定し、秋頃までに一人一台の環境整備の目途をつけるべきとしている。端末の持ち帰りを実現するために、Wi‐fi環境のない家庭へのモバイルルーターの貸与などにより、全ての家庭での通信環境を確保するよう求めている。また、持ち帰り時に児童生徒を有害サイトから守るためのセキュリティソフトの導入が必要であり、政府と自治体はこれを十分に支援すべきとしている。

 

著作権者許諾を原則不要に

著作権に関しては経済同友会は、小中学校の「スタジオ型」、「オンデマンド型」遠隔授業は、病気療養児や不登校児向けの「オンデマンド型」以外はそもそも想定がされていないため、許諾が必要となっているが、これを許諾不要とすべきだとしている。

小中学校の教員が作成する遠隔教育用配信教材でも特例的に許諾不要とすべきだとし、文化庁は文部科学省の遠隔授業についての要件見直しと平仄を合わせ、恒久的に許諾不要とすべきとしている。

さらに、文科省の通知では、「教育委員会が提供するICT教材や動画を活用した学習が効果的」とされているが、教育委員会が主体となり教材や学習動画を作成し、域内の児童生徒に配信する場合は補償金制度の対象外となっており、矛盾が生じている。このため、教育委員会が作成した遠隔教育用の教材について、今年度に限り無償・許諾不要とすべきだとしている。


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