2022年11月16日 筑波大講師ががん患者意識調査 知りたいのは「いつまで動けるか、話せるか」

国民の二人に一人がかかり、三人に一人の死因となっている「がん」。日本人の国民的疾患ともいえるこの病気の罹患者が最も知りたいのは、残された時間(生命予後)でなく、〝いつまで動けるか〟ということであることが、筑波大学講師が行った意向調査で明らかとなった。26.6%が回答した「生命予後」よりも多い33.6%~46.9%が「いつまで歩けるか、いつまで話せるか」という機能予後を知りたいと考えているという。特に、身近な人をがんで亡くした経験のあるがん患者に、より強くこの傾向がみられることが判明した。調査を行った同大医学医療系の濵野 淳講師は、がんの生命予後だけでなく、機能予後を予測する方法や本人の知りたい程度に合わせた伝え方を検討する必要性を訴えている。

 

「機能予後」の意識調査を初実施

がん患者にとって、予後情報は、治療方針や日常生活に関するさまざまな意思決定に影響を与える極めて重要な情報。がん患者や家族が残された時間(生命予後)を知りたいと思っているか、という研究は世界的に行われてきたが、ここ数年では、生命予後だけでなく、いつまで歩けるか、いつまで食事が摂れるか、といった身体機能の予後(機能予後)も、重要な情報であるといわれている。しかし、「実際にがん患者が機能予後を知りたいと思っているか」といった観点での調査は行われていなかった。

濵野講師の研究では、がん患者が機能予後を知ることに関する意向や関連する要因を、世界で初めて調査した。今年2月に国内のがん患者を対象に、機能予後を知ることに関する意向や関連する要因などを聞いた。

調査項目は、①「いつまで生きられるか」を知っておきたい(生命予後)、②「いつまで自由に動けるか(旅行など)」を知っておきたい(運動予後)、③「いつまで本を読むなど複雑な思考ができるか」を知っておきたい(思考予後)、⑤「いつまでちゃんと会話ができるか」を知っておきたい(会話予後)‐の六つ。それぞれ〝とてもそう思う〟から〝全く思わない〟の6段階で回答してもらった。

 

機能予後の予測方法の検討必要

調査の結果、〝生命予後を知っておきたい〟に対して、「とてもそう思う」「そう思う」と回答したのは全体の26.6%だった。機能予後に関しては、「とてもそう思う」「そう思う」と回答した患者が多かったのは、会話予後46.9%、食事予後43.1%、運動予後42.4%。思考予後は35.6%。

さらに、身近な人をがんで亡くした経験のあるがん患者は、生命予後や機能予後を知りたいと考える傾向がより強いことが分かった。

この結果は、がん患者は、いつまで日常生活や仕事ができるか、を考えるために、生命予後よりも、機能予後を知りたいと考え、身近にがんで亡くなった人がいる場合、より予後情報を知りたいと考えている可能性を示している。調査結果を踏まえて、濵野講師は、「がん患者の生命予後だけでなく、機能予後を予測する方法や、本人の知りたい程度に合わせた伝え方を検討することが必要と考えられます」としている。

この研究は、今年2月に国内がん患者132名を対象に、無記名のインターネット調査により実施。このうち67名(50.8%)が男性で、43名(32.6%)が消化器がん、23名(17.4%)が泌尿器がん、20名(15.2%)が婦人科がんの患者だった。


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