第4回「日本ベンチャー大賞」の受賞者が発表された。この取り組みは、社会的なインパクトのあるベンチャーを称えるもの。今回、内閣総理大臣賞である日本ベンチャー大賞は、「(株)メルカリ」が受賞することとなった。経済産業大臣賞については、「(株)ソラコム」と「KDDI(株)」がベンチャー企業・大企業等連携賞、「(株)ビザスク」が女性起業家賞を受賞。また、農林水産大臣賞である農業ベンチャー賞は、AI潅水施肥システム「ゼロアグリ」を開発・販売している「(株)ルートレック・ネットワークス」が受賞した。さらに、「(株)マネーフォワード」と「(株)PKSHA Technology」が審査委員会特別賞に選ばれている。表彰式は、2月22日にホテルニューオータニにて行われた。
「日本ベンチャー大賞」は、若者などのロールモデルとなるような、インパクトのある新事業を創出した起業家やベンチャー企業を表彰するもの。その取り組みを取り上げることで、起業を志す人々や社会に対し、積極的に挑戦することの重要性や起業家一般の社会的な評価を浸透させ、社会全体の起業に対する意識の高揚を図ることを目的に実施されている。
また、農林水産省では、農林水産分野における起業に対する意識の高揚を図り、農家所得の向上につながる新たな技術やサービスを提供する農業関連ベンチャーの活躍や参入によって農林水産分野のイノベーションの創出を促すため、前回の表彰の際に新たに農林水産大臣賞として「農業ベンチャー賞」を創設した。
今回が4回目の開催となるが、農林水産分野を含む214件のベンチャー企業から応募が寄せられた。その中から、有識者による審査委員会の選考を経て内閣総理大臣賞である大賞、経済産業大臣賞であるベンチャー企業・大企業等連携賞と女性起業家賞、農林水産大臣賞である農業ベンチャー賞、審査委員会特別賞の受賞者が決定した。
農業ベンチャー賞受賞者の概要
ルートレック・ネットワークスが開発・販売している「ゼロアグリ」は、点滴チューブを利用した点滴灌漑技術に独自のIoT基盤とAI技術、産学連携による栽培アルゴリズムを実装したAI潅水施肥システム。
このシステムでは、ハウスに設置された各種環境センサー情報をクラウドに蓄積し、クラウド内の栽培アルゴリズムで現在の作物の生長に最適な潅水施肥量を割り出し、自律的に供給する。経験と勘で承継されてきた潅水施肥作業を自動化するスマート農業システムで、労働時間の90%削減、50%の節水と減肥、30%程度の増収という実績をもつ。クラウドに蓄積されている栽培情報についても、農業ビッグデータとして新たなサービスを牽引し、将来にわたり持続的な農業革新への貢献が期待されている。
ルートレック・ネットワークスでは、ゼロアグリについて、「農業の主役である生産者が容易に導入でき、作物の収量増加と品質改善、省力化を実現し、収益向上をも可能とする。さらにはアジアの課題である水の枯渇問題や多施肥による環境問題を同時に解決するエコシステムである」と説明している。また、今後の取り組みとして、「強みであるICT技術により農業の課題を解決し、世界的人口増による食料問題に対応するためにも〝経験と勘による農業〟から〝データによる農業〟に貢献し、持続型農業を実現していくとしている。