2019年8月21日 科博が一層「おもしろくなる」なる 新しい発見に出会える場に 組織横断体制構築

科博がますます〝おもしろく〟なる―。東京・上野公園にあるわが国を代表する総合科学博物館「国立科学博物館」は、〝科学を文化として育む〟ことを目指した『科博イノベーションプラン』を策定し、同計画の実現に向けて今年4月に新設した科学系博物館イノベーションセンターを中心に、さまざまな取組を展開している。同センターでは、財政基盤の強化と地域博物館の事業活性化を目的とするもの。『科学を文化として育む博物館』を目指して、多彩な施策を講じる方針だ。

同館の林 良博館長によると、「これまで科博は、〝科学好きな人たちが集まる場所〟というイメージがあったが、初めて科博を訪れた子どもたちがそうであったように、これからは〝誰もが新しい発見や驚きに出会える場所〟に変えるための組織横断的な体制が科博に誕生した」という。

 

情報通信技術活用し子供たちがホンモノを体験

もちろん、〝ホンモノ〟を展示することを大切にしてきたこれまでの良き伝統は、今後も継承する。茨城県筑波の収蔵庫には470万点を超える標本が保管されているが、都心から50km離れているために、多くの人々に見てもらうことはできない。また、劣化しやすい標本を日常的に公開することもできない。

しかし、新しい情報通信技術を用いると、上野の地で筑波の収蔵庫に関する大画面のVR体験をしてもらうことや、筑波の研究者が標本とともに学校の子どもたちと双方向のVR授業を行うことも可能となる。

こうした標本をさまざまな用途で活用できるようにするため、他の博物庵と共同して、誰もが利用できる「科博デジタルアーカイブ」を構築するための準備を、イノベーションセンターで進めている。データの教育利用としては、各地の学校などでダウンロードし、3Dプリンターでレプリカを作成すると、実習等の教育に利用できる。

また、このデジタルアーカイブは商用利用も可能。Tシャツやマグカップなどに限らず、さまざまなミュージアムグッズにプリントして販売するなど、博物館がより身近な存在となるよう努めることとしている。

 

CFで市民参加型研究開始

科博は研究機関でもある。インターネット上で資金を集めるクラウドファンディングなどを活用した市民参加型研究として3年前に開始した「3万年前の航海―徹底再現プロジェクト」は、7月7日に台湾を出航した丸太舟が、45時間かけて与那国島にたどり着いた。この成功は、実験考古学など新しい研究への関心や理解を高めただけでなく、多くの人々が研究の実施プロセスに参加できることを証明したといえる。

さらに、10月14日まで開催中の「恐竜博2019」は、1969年に『恐竜ルネサンス』と呼ばれる恐竜研究の新時代が始まって以降50年の恐竜学の歩みを重要標本で振り返る特別展。わが国恐竜研究史上最大の発見といわれる『むかわ竜』や、全身復元骨格を世界初公開する謎の恐竜『デイノケイルス』などを展示している。

 

11月には「ミイラ展」

続いて、今秋11月2日から開催予定の特別展「ミイラ展」も、早くも話題を呼んでいる。人類の多様な文化での死生観を理解するため、世界のミイラを上野に集結させる。博物館イノベセンターの池本誠也センター長は「科学系博物館があることで、社会が豊かになることを目指している」と意気込む。林館長は「これからの科博はますます〝おもしろく〟なる」と語り、今後も続々と、科学ファンだけでなく、多くの人々に科学を楽しませてくれる企画を多数用意する意向を示している。


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