2023年5月24日 病院食の充実で入院患者の寝たきりへ 日慢協、栄養改善に食事療養費の増額要求

日本慢性期医療協議会は18日の定例記者会見で、入院患者の寝たきりを防止するために病院食を充実させる必要があると訴えた。具体的には、次期診療報酬改定で25年間据え置かれている入院時食事療養費の金額を引き上げるよう求めている。

食事療養費は、1994年度の制度導入後、2006年度の診療報酬・介護報酬改定で定められた1日1920円(※ 1食640円)から現在まで価格が据え置かれている。制度創設から2回あった消費増税のタイミングでは、いわゆる基本診療料で対応されていたが、2014年度の5%から8%引き上げの際は費用の補填が不十分だったといわれている。日慢協は、病院の給食部門が2017年調査時点ですでに赤字だと説明。加えて、近年の人件費や物価の高騰、電気・ガス代の値上がりなどによって、改善の余地は限界に来ていると警鐘を鳴らしている。

 

■ 高齢者は入院中に体重減少

一般的に高齢な入院患者の栄養状態は、急性期病床での治療中に低栄養に陥り、回復期などに移った後も改善することなく退院に向かう。厚生労働省の2019年国民健康・栄養調査によると、60代男性患者の平均BMIは通常時の24.0から、急性期での治療の間に21.6まで下落。回復期での治療を経て退院時は21.2まで下がっている。

体重減少の原因はカロリー不足だ。その要因としては、そもそもの基準栄養量の不足や高齢化等による摂取量自体の不足が考えられている。病院基準食は、入院患者の年齢構成を加味して摂取カロリーが決まり、例えば高齢の女性が多く入院する病院では1500kcal~1600kcalとなることが多い。しかし、日慢協はこの摂取量では、体重増など回復に必要なエネルギーやリハビリで消費するエネルギーをカバーできていないと指摘。基準となる栄養量を改善すれば、体重が減少する患者を低減させることが出来ると述べた。

さらに、嚥下機能や高齢などによって食事が全て食べきれないケースについては、1品の栄養量をアップさせるための「ちょい足し」を行ったり、食事回数を複数回に分けたりする工夫も提案。一時的に胃ろうを増設して足りない分を補給、通常の分量が摂取可能になったら抜去する手段なども併せて講じていくのが望ましいとした。

食材選びも重視し、例えば薬味の柚子胡椒をタルタルソースに変えることで同じ分量でもカロリーを約10倍に、みそ汁の具を豆腐から油揚げにすることでカロリーを約6倍に、パンのトーストをクロワッサンにすることでカロリーを約1.5倍にできると紹介。調理方法もバンバンジーから唐揚げにすることでカロリーが1.5倍、アジの塩焼きからアジフライにすることで約2倍にすることが可能だと示した。

また、摂食機能を高めても、食事自体に魅力が無ければ摂取量は減少すると指摘。味はもちろん、盛り付けも含めた見た目やメニューの幅広さなど、食欲増進に向けた気遣いが求められるとしている。


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