厚生労働省はこのたび、2018年9月の時点で耐震改修を終えていない病院が、全体の9.4%に上るという調査結果を公表した。耐震化率は地域ごとにバラつきがみられ、西日本を中心として低い地域が多い傾向にある。
調査は昨年の11月に都道府県を通じて行ったもの。対象となった8383施設中、8362施設から有効な回答を得た。耐震化は、震度6強以上を想定した耐震基準をクリアしたことを指す。
それによると、全国の病院のうち、全ての建物が耐震化しているところは、前年比1.6ポイント増の74.5%だった。一部の建物の耐震性が不足しているところは7.9%、全ての建物で耐震性が不足しているところは1.5%となっていた。そのほか、16.1%については、「建物の耐震性が不明」と答えている。
都道府県ごとの耐震化率をみてみると、全国トップは静岡県の90.4%。次いで、滋賀県の89.5%、宮城県の89.2%が続いた。今年度末までに耐震化予定の建物を含めても、静岡県(91.5%)、滋賀県(89.5%)、宮城県(89.2%)で上位の顔ぶれに変化はなかった。
一方、耐震化が最も低かったのは福島県の64.9%。それに、京都府の65.1%、大阪府の66.9%が続いた。特に西日本では、関西地方の滋賀県や奈良県(83.5%)、中国地方の島根県(81.6%)、九州・沖縄地方の大分県(84.1%)、沖縄県(80.6%)といった一部を除き、耐震化率が7割前後と低い地域が多かった。
■ 災害時拠点病院の耐震化率は9割
調査ではさらに、地震発生時の医療拠点となる災害拠点病院や救命救急センターの耐震化率が、前年比1.3ポイント増の90.7%だったと公表した。一部の建物の耐震性が不足しているところは8.6%、全ての建物で耐震性が不足しているところは0%、耐震性が不明なところは0.7%となっている。
地域別では、秋田県、山形県、群馬県、富山県、石川県、福井県、長野県、静岡県、滋賀県、和歌山県、徳島県、香川県、高知県、長崎県、宮崎県‐の15県が100%。大分県(92.9%)も今年度末までには100%を達成できる見込みだ。
■ 耐震化率、10年間で24ポイント増
病院の耐震化率は2008年の50.8%から、10年間で23.7ポイント増加。災害拠点病院や救命救急センターは同じく10年間で32.1ポイント増えている。
国は医療機関の耐震化を進めるため、さまざまな支援策を用意。耐震診断の費用の3分の2を国と都道府県が負担する「医療施設運営費等補助金」や、病院の敷地面積に応じて耐震整備を補助する「基幹・地域 災害拠点病院施設整備事業」や「地震防災対策医療施設耐震整備事業」などがそれにあたる。
こうした取り組みの結果、国が2015年に「国土強靱化アクションプラン2015」で定めた「2018年度までで災害拠点病院及び救命救急センターの耐震化率を89.0%」とする目標をクリアしていた。