大学共同利用機関法人情報・システム研究機構の統計数理研究所(東京都立川市)は、日経テクノロジーオンライン、クラリベイト アナリティクス、オプトホールディングとの共同研究として、産業界の技術情報と学術界の論文情報を融合し、技術的需要と基礎研究の関係をシームレスに可視化するための情報システムの研究を開始することで合意した。
統数研など4者は今後共同で、企業活動の成果である国内の産業技術雑誌のアーカイブと、科学分野の文献コンテンツである「Web of Science」のデータを用いて大規模で複雑な情報から新たな知見を抽出するために、統計科学・情報学に基づく分析手法の研究を行う。
具体的には、1)産業技術情報を加味した論文評価のための数理手法の開発、2)爆発的な引用数の増加など新分野創出の萌芽を捉えるネットワークアルゴリズムの研究、3)学術情報と産業情報の関係性に基づく検索システムと自然言語処理技術の開発―といった課題に取り組む。
共同研究の成果として、将来起こり得る科学技術イノベーションの創出を発見、予測するシステムの構築を目指す。この情報システムを活用することで、異分野融合による研究の多様性と新たな価値を創出する取り組みをサポートする。
産業技術と学術研究を接続
科学技術の活用を前提とした経済成長のためには、学術界の成果を産業界がすばやく実装し、その収益が学術界にも再投資される循環メカニズムの確立が必要とされている。このサイクルを自律的に維持するためには基礎研究のインパクトを適切に計測し、社会需要が存在する産業領域との関係性を発見することが重要だが、両者の情報はこれまでそれぞれの領域のみで活用されており、産業技術と学術研究の情報を接続し、横断的・効率的に知見を得るための研究はほとんど進んでいないのが現状。
また、大学等の研究機関で戦略の策定を担うIR部門においても産業界のニーズ、動向を把握することがますます重要になっている。
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【統計数理研究所】 昭和19年に文部省直轄の研究所として設置され、統計数理研究の中心的な研究機関として、先駆的な役割を果たしてきた。
昭和60年に国立大学共同利用機関として改組され、平成16年からは情報・システム研究機構の一員となり、共同利用を推進する立場として、研究所内外の研究者の交流の場を提供しながら、統計科学の理論と応用における多面的な発展に寄与している。
これまで極めて広い分野の研究者に開かれた研究所として、国内はもとより国際的にも多種多様な共同研究活動を飛躍的に発展させ、世界をリードする成果をあげてきた。
また、総合研究大学院大学の基盤機関として、若手研究者の育成に取り組みながら、一般社会人らを対象とする統計科学の知識や技術の普及活動や国際的な研究協力・交流促進の機能を果たすよう積極的に努力している。