政府は10月23日、2020年版の「厚生労働白書」を閣議決定した。
日頃のちょっとした手助けを得ることができない − 。そうした課題を持つ生活支援が必要な高齢者世帯が、1990年から2015年の25年間で44万世帯から160万世帯に増えたと説明。更に25年後の2040年には、230万世帯まで膨らむとの見通しを示した。今後、地域で共に支え合う活動、相互のネットワークの構築が必要になると強調している。
「これまで増えてきた生活支援のニーズは、ケアマネジャーやホームヘルパーなどがなんとかカバーしてきた面がある。今後はそれだけでは厳しい。どう支えていくかが大きな課題だ」。厚労省の担当者はそう指摘している。
今回の厚労白書は、「令和の社会保障と働き方を考える」がテーマ。平成の30年間を振り返りつつ、高齢化がピークを迎える2040年頃を視野に入れた施策や調査結果を初めて盛り込んでいる。
23日の閣議で田村憲久厚労相は、「国民1人1人が十分に能力を発揮しながら、必要なときには支えあっていくことができる社会の構築に向けて全力で取り組む」との意向を示した。
また白書では、高齢化が一層進行し、2040年には65歳以上の人口が3921万人まで増加すると予測。高齢化率も昨年の28.4%から35.3%と6.9ポイント上昇すると見込んでいる。その年に65歳の人のうち、90歳まで生きる割合は男性が42%、女性が68%と平均寿命も延伸。100歳まで生きる割合も男性6%、女性20%まで伸びると推計している。
一方で、医療福祉従事者のニーズは、最大で1070万人と、全就業者の約5人に1人まで増加する見通し。それと反するように本格的な人口減少が進む中で、就業者を始めとする「担い手」は減少が懸念されている。
こうした需給のギャップ解消に向けては、女性や高齢者の就業率の一層の向上とともに、働く人のポテンシャルを引き上げ、活躍できる環境整備が必要だと指摘。医療福祉現場の生産性を上げることにより、より少ない人手でも現場が回っていく体制を実現していくことが必要だとした。デジタル・トランスフォーメーション(DX)への対応も不可欠になるとしたうえで、「ポスト・コロナ」の社会も展望しつつ、社会保障制度改革について、国民的な議論を深めていくことが望ましいとしている。