現在、太陽光発電事業は環境影響評価法の対象とはなっていない一方、昨今の大規模太陽光発電事業を取り巻く状況を踏まえ、法の対象事業に太陽光発電施設の設置を追加すべきかどうかについて検討を行う必要が生じている。また、昨年7月に閣議決定されたエネルギー基本計画で、「風力発電設備の導入をより短期間で円滑に実現できるよう、環境アセスメントの迅速化や規模要件の見直し、参考項目の絞り込みといった論点も踏まえた必要な対策の検討」する旨が記載されたことから、風力発電施設に係る規模要件の見直し等についても検討が必要な状況にある。環境省の「太陽光発電施設等に係る環境影響評価の基本的考え方に関する検討会」はこのほど、報告書(案)を取りまとめた。
報告書案では、太陽光発電の導入状況について、導入が大幅に拡大する中で、建物屋上や工場敷地内の空き地等に加え、森林等の中山間地域で大規模に設置する事例が増加。隣地開発許可の対象となる森林の開発行為で、太陽光発電事業を目的とした件数や面積が増加し、大規模に森林を開発する事案も見られることを指摘した。
太陽光発電事業による環境影響については、16年~18年夏までの報道状況をみると、太陽光発電事業での環境保全等に係る問題事例数が69件あり、主な問題点として、土砂災害等の自然災害の発生、景観への影響、濁水の発生や水質への影響、森林伐採等の自然環境への影響、住民への説明不足といったものがあげられる。土地利用別の問題事例数では、問題が発生した事例の大半が森林であり、敷地面積別でみると、面積の大小にかかわらず問題が発生している。
太陽光発電事業についての環境影響評価の実施状況等として、条例で、太陽光発電事業を対象に位置付けている地方公共団体は、4県3市となっている。また、条例の中に太陽光発電事業は対象事業として明記されていないが、電気工作物の新設に含めて対象としている地方公共団体が3市、土地造成事業、工業団地の造成等の面開発の一種として対象となり得る地方公共団体が28府県11市ある。面開発の一種として対象となり得る地方公共団体の規模要件(第1種事業相当)は、50ヘクタール以上としている地方公共団体が最も多い。
地球温暖化問題が顕在化している中、太陽光発電、風力発電を始めとする再生可能エネルギーについては、長期安定的な主力電源として持続可能なものとなるよう、円滑な大量導入に向けた取組を引き続き積極的に推進していく必要がある。
そうした中、風力発電事業に加え、今回新たに太陽光発電事業についても環境影響評価を義務付けることによって、その導入・普及の遅れを懸念する向きもあると考えられる。しかし、これらの事業が、様々な環境影響に関する苦情や問題の原因となり、それにより地元調整が難航し、立地が進まない事案も起きているのも事実と指摘。特に太陽光発電事業については、環境配慮や地域との情報交流の取組は緒についたばかりであり、今後、透明性の高い環境影響評価が行われれば、地域の理解と受容が一層進み、むしろ環境と調和した形での再生可能エネルギーの健全な立地が促進されると考えられるとした。