「理系は『男性の学部』というイメージ」。文科省科学技術・学術政策研究所が公表した調査報告「大学学部生の科学技術情報と進路選択に対する意識」で、こうした女性大学生が持つ理系学部等へのイメージが明らかになった。また、女性の理系選択の〝壁〟となるのは「ライフイベントとキャリア形成の両立」で、博士号等を取得した後のキャリア形成と結婚・出産といったライフイベントの選択を迫られることを多くの女性が懸念している現状も浮き彫りとなった。
科政研が公表したこの調査は、わが国の次世代を科学技術を担う大学学部生の科学技術に対する興味関心、科学技術情報の日常的な情報源と信頼性に関する意識や、科学技術の基礎的概念の理解と、さらに進路選択に関する意識等を把握することを目的に行ったもの。国内の大学学部課程に在籍する学生3231人(男性1189人、女性2042人)から回答を得た。
調査によると、大学での専攻が理系の学生は、小・中・高校生の頃に理科や算数/数学が「好きだった」と回答した割合が「嫌いだった」を上回った。一方、大学での専攻が理系以外の学生は、小中高校生の頃に理科や算数/数学が「好きだった」と回答した割合が「嫌いだった」を下回った。
信頼できる情報は専門書籍や論文雑誌
科学技術情報に対しては、「関心がある」と回答した学生は59.2%の1911人。男女別では男性の63.2%、女性の48.3%が「関心がある」と答え、男性の方が科学技術情報に対する興味関心が高い傾向にあることが分かった。専攻別では理系の73.1%、理系以外の42.4%が、興味があると回答した。
科学技術情報が提供されているとした学生は1643人で、全体に占める割合は50.9%。男女別では男性の53.3%、女性の48.2%、専攻別では理系の57.6%、理系以外の46.9%が提供されていると答えた。
最も多くの学生が信頼できる科学技術情報源として選択したのは「新聞(電子版を含む)」。ただし、この回答は「どちらかというと信頼できる」も含めたもので、「信頼できる」だけだと専門書籍や論文雑誌(電子版を含む)が最も多かった。一方、電子掲示板やSNSについては、最も信頼がない情報源とされた。
3ヵ月以内の短期留学と3ヵ月を超える長期留学の希望の有無を尋ねた結果、長期留学の希望者の割合は理系よりも理系以外の学生で高い傾向にあった。また、大学進学時での進路決定要因について尋ねた結果、理系女性は他の群と比べて保護者の意見や卒業後の就職への有利性、資格や技術の習得可能性の有無を進路決定要因として特に重視する傾向がみられた。
修士課程・博士課程への進学に対する意識では、理系学生、特に理系男子が、他の学生に比べて修士課程への進学を希望する学生の割合が高かった。将来就職先を決める際の決定要件に関しては、理系学生は専門性の活用や安定性などを重視する傾向がみられた。
女性の理系選択の〝壁〟と思われる要因に関しても調査。最もポイントが高かったのは「ライフイベントとキャリア形成の両立が難しい」であった。科技学術研では、博士号を取得する場合では、取得後のキャリア形成の時期と結婚・出産・育児等のライフイベントが重なる場合に、博士号を取得しても〝キャリアか出産か?〟という二者択一を現実的に迫られることを多くが懸念している現状を示したものと指摘。さらに、大学進学時点で「理系は男性の学部」というイメージが深く根付いていることも、今回の調査であらためて明らかとなった。