2017年2月9日 無花粉スギで花粉発生源対策 成長に優れた特性、林業の推進にも貢献

(国研)森林総合研究所材木育種センターは、成長等に優れた精英樹を無花粉スギに交配させ、初期成長に優れた無花粉スギの品種を開発した。この品種は、これまでの無花粉スギと比べて成長にも優れた特性を有していることから、花粉発生源対策としてだけでなく、林業経営にも資することが期待されている。

 

花粉発生源対策として開発された〝無花粉スギ〟を改良

スギ花粉症は、国民の3割が罹患しているとも言われ、社会的に大きな問題となっている。このため、林野庁では、花粉発生源対策として、花粉生産量が少ない特性を持つ花粉症対策品種の開発や、それらから生産される苗木の普及等を通じて花粉の少ない森林への転換に取り組んでいる。

林木育種センターでは、これまでに無花粉スギ「爽春」を開発(平成20年3月に品種登録)してきたが、こうした花粉症対策品種を林業経営者に積極的に利用してもらうため、爽春を品種改良し、花粉を全く出さないという特徴に加え、植栽後の初期成長にも優れるという2つの特徴を併せ持つ品種の開発に取り組んできた。

 

爽春を母親、精英樹を父親に人工交配

爽春の無花粉の性質は、一対の劣性遺伝子によって支配されており、メンデル遺伝することが確認されている。無花粉の遺伝子をa、花粉を形成する遺伝子をAとすると、aaを保有する個体は無花粉となるが、AaやAAの個体は花粉を生産する。

林木育種センターでは、爽春(aa)を母親とし、精英樹(AA)を父親とした人工交配を行い、F1の苗木(Aa)を作り、さらに交配してF2の苗木を育成した。

F2の苗木では、メンデルの法則に従い、1/4の確率で無花粉の個体が出現する。この無花粉のF2苗木の中から、植栽後6年程度までの初期成長の樹高が精英樹の平均と同等で、幹の通直性の優れた品種が選ばれた。

 

2ヵ所の試験地で2年間花粉をまったく出さないことを確認

今回開発された品種(林育不稔1号)については、品種開発のための調査の中で2ヵ所の試験地で2年間花粉を全く出さないことが確認されている。また、この品種の植栽後6年目の樹高は6.6メートルで、成長が優れている精英樹と同等であることも確認された。

この品種は、平成28年度の林木育種センター優良品種・技術評価委員会で評価され、優良品種として認められている。

 

さらに成長に優れた無花粉スギの開発

林木育種センターでは、開発した優良品種のさし木苗木・つぎ木苗木の育成を進め、要望のあった首都圏とその周辺地域の県に配布している。これにより採穂園を造成し、ここから生産されたさし穂により造林用のさし木苗が育成できる。また、この優良品種を使って、さらに成長に優れた無花粉スギの開発を目指していくとしている。


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