2024年10月15日 点滴整理をサポートデバイス 東北大院生らが開発、今年中に全国販売

医療現場では多くの患者が治療のために点滴を必要とし、特に重症患者に対する集中治療では同時に何種類もの点滴が必要になる。患者の体位変換や、検査で移動する際、点滴ラインが容易に絡まり、その整理に多くの時間が費やされ、看護師の精神的・時間的な負担が増加していた。

この問題を解決するため、東北大学未来型医療創造卓越大学院プログラムのプログラム生で大学院生の横川裕大さん、國富葵さんと臨床研究推進センターバイオデザイン部門の小鯖貴子助手らは、点滴整理をサポートするデバイス『カラフルラインホルダー』を、YKアクロス株式会社、広陵化学工業株式会社と連携して開発した。この製品は、カラフルなブロックで点滴ラインを1本ずつ保持して絡まりを防ぎ、ワンタッチで3段階の長さ調節が可能な構造。今年中にYKアクロス株式会社が全国販売を開始する。病室や手術室などで点滴ラインの絡まりを解消し、患者ケアの時間と質の向上に貢献することが期待される。

 

点滴管理に割く多くの時間

入院患者に投与される点滴のラインは、日々のケアや処置、移動などで容易に絡まる。特に重症患者の治療では多くの点滴ラインを24時間持続的に必要とし、これらの点滴ラインは通常、床に触れて不潔にならないように余剰部分を点滴台などにまとめて掛けられている。

しかし、合併症予防のための体位交換や処置、検査や部屋移動の際には、一時的に点滴ラインをほどく必要があり、その結果、点滴ラインは頻繁にかつ複雑に絡まってしまう。点滴ラインが絡まると管理が困難になり、何の薬剤がどのラインから注入されているか判別しづらくなり危険。このため、平時から点滴ラインを整理し絡まりのない状態を維持することは重要で、この業務に看護師は多くの時間を費やしており、精神的・時間的な負担を増加させ、患者ケアに費やす時間を減少させる一因となっていた。

 

院生が問題に気づく

東北大未来型医療創造卓越大学院プログラム(プログラムコーディネーター:中山啓子教授)では、医療現場の課題をバイオデザインの手法を用いて抽出し、言語化する現場観察を行っている。同プログラム生で大学院生の横川さんと國富さんは、臨床研究推進センターバイオデザイン部門の小鯖貴子助手とともに高度救命救急センターを観察。入院患者の点滴ライン整理に時間がかかっていることに気がつき、この問題を深堀りした。そして、90以上のソリューションアイデアを考えた結果、点滴整理サポートデバイス『カラフルラインホルダー』を開発した。

このデバイスは、点滴を保持する連結されたブロックと長さを調節できるリールの二つの構造からできている。点滴ラインを1本ずつカラフルなブロックで保持することで絡まりを防ぎ、整理と認識をしやくするとともに、処置や移動の際にはブロックでラインを保持した状態のままリールの部分をワンタッチで3段階に長さを調節することができる。

YKアクロス株式会社(本社:東京都港区)、広陵化学工業株式会社(奈良県北葛城郡)と連携してデバイスの製品化を進めており、プロトタイプを用いた実証研究では、点滴整理にかかる時間の短縮と看護師のストレス軽減が確認された。

点滴の絡まりを防ぎ、かつ長さ調節を同時に行うアイデアはこれまでになく、のデバイスは、病室や手術室などでの点滴ラインの絡まりを解消し、患者ケアの時間の確保と質の向上を図る。この製品は意匠権を取得済で現在特許を申請中。今年中にYKアクロス株式会社が全国販売を開始し、多くの医療機関での導入が期待されている。


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