大阪国際がんセンターは21日、台本を自動で作り自ら披露するロボットで、がん患者を楽しませること可能か検証する取り組みを始めた。医療や介護の現場でも必要とされる「笑い」や「癒し」を届けるため、今後の実用化を目指すという。
実証研究では、甲南大学と奈良先端科学技術大学院大学が共同開発した「漫才ロボット」で、ボケ担当の「ゴン太」と、ツッコミ担当の「あいちゃん」によるコンビを使用。ロボットは、その場でキーワードとなる「お題」をもらうことで、それに関連するニュース記事をピックアップし、「つかみ」、「本ネタ」、「オチ」の3段構成の台本をつくる。漫才の導入にあたる「つかみ」は季節の挨拶をして、主軸となる「本ネタ」部分ではニュース記事を紹介しつつ言い間違えや過剰ボケ、ノリツッコミ、対立ボケや感情ボケなどを行い、最後の「オチ」では「なぞかけ」を自動生成する。この日は、同センターで治療を受けている患者からもらったお題をもとにした漫才を披露した。
研究では、同センターを受診している20歳以上の患者30人を対象に、「漫才ロボット」による即興漫才を鑑賞してもらう。鑑賞中の様子をビデオ撮影し、笑顔認識による笑顔の回数と時間をカウント。鑑賞後には精神的な健康状態を把握する項目が並んだ質問用紙に回答を記入してもらう。1回につき10分程度を同日に3回行い、連続しない2日で計6回の動画撮影を行う。
■ 漫才・落語の鑑賞実験も
同センターでは昨年から、「笑い」によるがんの免疫力向上などを目的とした研究を実施。吉本興業や松竹芸能などの協力を得て2週間に1度、同センター内ホールで漫才や落語を数回行い、全て鑑賞した患者と半分だけ鑑賞するグループに分け、それぞれの血液を検査した。がん細胞を攻撃し排除する免疫細胞の代表格「NK(ナチュラルキラー)細胞」に着目したところ、鑑賞したグループは2ヵ月でNK細胞を活性化するたんぱく質を作る機能が1.3倍に上昇していた。患者全体でも免疫細胞の増加傾向がみられた。また、患者の気分の変化などもアンケートし、緊張や抑うつ、疲労などの6項目全てで改善がみられ、がんの痛みについても改善があったという。