キリンホールディングスは7日、明治大学総合数理学部先端メディアサイエンス学科の宮下芳明研究室と共同研究で、減塩食品の塩味を約1.5倍に増強させる独自のテクノロジーを搭載したスプーンと、お椀型の「エレキソルト」デバイスを開発したと発表した。9月から実証実験を開始し、2023年のデバイス発売を目指す。
日本人の1日当たりの食塩摂取量は20歳以上の男性で10.9g、女性で9.3gと、WHO(世界保健機関)が掲げる食塩摂取基準と比較しても非常に多いことが知られている。これを受け、日本の減塩・無塩食品市場は2015年から2020年にかけて約26%成長するなど拡大傾向にある。ただ、キリンが首都圏に住む減塩食を行っている・行うつもりの人に実施したアンケートによると、約63%が減塩食に課題を感じており、そのうちの約8割が味に対する不満を抱えていた。
そこで研究グループは、人体に影響しない程度のごく微弱な電流を用いて疑似的に食品の味の感じ方を変化させる「電気味覚」の技術の活用に着目。減塩食の味わいを増強させる独自の電流波形を開発し、減塩をしている・したことがある人を対象にした臨床試験で、減塩食を食べたときに感じる塩味が約1.5倍程度に増強されることを世界で初めて確認した。
今回開発した「エレキソルト -スプーン-」と「エレキソルト –椀-」は、電源を入れて4段階から好みの強度を選択し、通常通りに使用することで微弱な電流が流れて効果を発揮する仕組みだ。研究グループこれらを使って今月から11月の間に、減塩専門店「無塩ドットコム」を運営する株式会社ノルトと、食を起点に暮らしの情報を発信している株式会社オレンジページとで実証実験を計画。両社の会員から募った対象者に、共同開発した減塩食をエレキソルトデバイスとセットで提供し、満足度を評価してもらうという。