本邦建設企業が専ら請負工事に依存した事業モデルから脱却し、PPP事業等への取組により、運営・修繕等による継続的な収入を確保していくための課題や方策について検討していた国土交通省の「建設業の国際競争力の強化に関する検討会」は30日、議論の結果を報告書にとりまとめた。報告書では、インフラPPP市場の現状等の基礎情報や、本邦建設企業がPPPによる海外展開を行うに当たっての課題・方策、政府支援の在り方等をあげている。
インフラPPP市場の現状について、国内のPFI案件はその数を順調に伸ばしており、PFIを含むPPP市場は着実にその裾野を広げている。世界全体でもインフラの整備・運営に関するPPPは着実に広がりを見せている。
世界全体では、民間のデータベース(Inframation)によると、空港分野については910件、道路分野では2629件の情報が確認できた。 我が国企業の海外PPPへの取組については、近年、我が国建設企業による海外PPP事業への参画は、国内でのPPP事業には積極的な企業や過去に海外PPPの経験がある企業を含め、極めて抑制的である。
一方、商社や特殊会社の中には、現地の道路事業運営会社への一部出資による道路PPP事業への参画や、事業運営支援のための人の派遣、現地会社との合弁による海外空港運営事業への参画等をしている者が見られた。
これらを踏まえ、我が国建設企業による海外インフラPPP案件への取り組みを促進する上で、①PPP案件への参画意義・方法、②企業内の体制・人材、③海外企業との連携、④マーケット環境、⑤金融・法務上の課題、が課題と考えられる。
日本建設企業による海外PPP展開への方策については、経験の蓄積、建設企業における対応力の強化の柱で整理。
経験の蓄積では、様々な形態で実際に案件への参画を果たし、経験を蓄積することが重要とした。その上で、共同出資への参画、O&Mへの参画、オペレーターとの提携、民間事業者提案型案件形成の活用等を求めた。
建設企業における対応力の強化では、人材面を含め、PPP事業への対応力の強化が重要と指摘。その上で、人材育成・確保、ローカル化の促進、現地企業とのM&A等を通じた積極的な事業拡大、共同出資者等からの利益相反への懸念への対処が必要としている。
さらに、建設企業側における対応に加え、特に案件形成を中心に政府による支援への期待も高いことを指摘。具体的な支援策として、案件形成に向けた支援、事業性の確保・向上に係る支援をあげた。
案件形成に向けた支援では、トップセールス等を通じた情報収集や売込みの強化、政府間枠組みの構築、フィジビリティスタディ、デューデリジェンス等に対する支援、現地政府における入札手続きに対する支援、建設企業の関心の高い国に対する法制度整備支援、現地パートナーやオペレーターとのマッチングの支援を求めている。
事業性の確保・向上に係る支援では、政府の各種支援策・資金の活用強化、国際開発金融機関との連携をあげている。