2017年1月10日 沖縄でバス自動運転の実証実験 内閣府事業が3月から、渋滞解消などで高まる期待

高齢者の自動車事故発生などに伴い注目を集めている自動車の自動運転。政府では、東京オリンピック・パラリンピック開催年である2020年をターゲットイヤーに設定し、さまざまな施策を展開しているが、今年3月から、沖縄でバス自動運転の実証実験が開始されることとなった。全国でもトップレベルにある沖縄の渋滞解消や、クルーズ船で訪れる海外からの観光客の輸送手段としての活用が期待される。

 

不可欠な正着制御技術

実証実験は、内閣府の「戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)」事業として行われる。SIPは、総合科学技術・イノベーション会議が自らの司令塔機能を発揮して、府省の枠や旧来の分野の枠を超えたマネジメントに主導的な役割を果たすことを通じて、科学技術イノベーションを実現するために新たに創設したプログラム。実証実験はSIP構成課題の一つである「自動走行システム」が推進する。

バスの自動運転実現には、高齢者などが乗り降りしやすいように、バス停にほぼ隙間なく正確に自動横付けする機能(正着制御技術)などを実現する「次世代都市交通システム」に係る技術の確立が不可欠。SIP自動走行システムでは、東京都が東京五輪・パラ五輪に向けて検討中の新たな公共バス(都心~臨海地域)への導入に向けて進めている取組に、26年度から参画し、東京都や関係企業と連携しつつ、これまでさまざまな取組を進めてきた。

今後は、この東京都での実用を目指して、引き続き産学官の連携、国と都の連携を進めるとともに、地方展開といったさらなる社会実装の取組が必要となる。

沖縄での実証実験は、こうした状況などを背景に進めるもの。技術開発だけでなく、沖縄の観光競争力を高め、また、今後の高齢化社会の進展に備えるためにも、過度の自家用車依存社会から脱し、全国でも深刻な渋滞を解消することが強く求められていることから実施することとなった。

内閣府の沖縄担当部局の「沖縄の道路渋滞対策と新たな交通環境を考える有識者懇談会」が昨年秋に公表した中間とりまとめでも、公共交通ネットワークの整備・再編等に向けて、コミュニティバス等への自動運転技術の活用に向けた社会実験の実施などが提言されている。

 

来年度中には通常の交通状況で実験

今春始まる沖縄でのバス自動運転実証実験では、沖縄の交通環境やニーズ等に合わせ、ステップ・バイ・ステップ(一歩一歩着実に)で実施する。3月に第1ステップとして、公道で公共バスの正着制御の技術実証などを行う。この段階では、安全確保のため、一時的な通行止め等の措置を行う可能性もあるが、来年度中に第2ステップとして、公道上の通常の交通環境で、実証実験を実施する。

さらに30年度は、同実験の最終段階である第3ステップとして、公道上の通常の交通環境で、公共バスの正着技術を含むより高度な自動運転バスで、技術実証等を行う予定。沖縄県南城市等を実施予定エリアとする計画で、あさまサンサンビーチ周辺道路での事業展開に向けて現在調整を進めている。

さらに、沖縄でのバス自動運転技術は、日常生活だけでなく、クルーズ船着岸時など、一時的に発生する大量輸送需要への対応も視野に入っている。沖縄には現在も大型船などで一度に多数の観光客が訪れるが、その際、港から観光地やホテルなどへの移動手段が課題となっている。

バス運転従事者を増やしたいが、日常はそれほど多くの需要がなく、運転手の増員は企業にとって困難。自動運転技術を活用することで、大量輸送と乗務員や車両の効率的な運用の両立が可能となるなど、期待が高まっている。


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