歩道の多いウォーカブル(歩きやすい)な地域では認知症のリスクが半減する‐。こうした研究結果を、東京医科歯科大学や千葉大学のグループがまとめた。
研究グループは、65歳以上の高齢者7万6053人を、およそ3年間にわたって追跡。居住地近隣の歩道面積割合と認知症発症との関連について分析を行った。
歩道面積割合は地理情報システムを使って、参加者の居住地の小学校区内の全道路面積に占める歩道面積割合を算出。歩道面積割合の多い順に、① 9554人、② 1万1847人、③ 2万2661人、④ 3万1991人の4つのカテゴリーに分けた。
認知症は介護保険賦課データにある「認知症高齢者の日常生活自立度」のランク2以上と定義。さらに、歩道が果たす役割は、地域の発展度合いによって異なるため、OECDの都市度分類に応じて参加者の居住地域を「都会」と「田舎」に分け、それぞれにおける歩道と認知症との関連について解析している。
追跡した高齢者のうち、約3年間で認知症になったのは、①が502人、②が766人、③が1431人、④が2611人だった。ここから認知症リスクとして関連するとされる、年齢、年齢、性別、教育歴、経済状況、婚姻状況、就労状態、健康状態(高血圧、糖尿病、難聴、心臓病、脳卒中、うつ、手段的日常生活レベル、認知機能)、居住期間の影響を取り除いて解析。その結果、居住地の歩道面積割合が最も低い群に比べ、最も高い群の認知症リスクは45%低かった。また、都市度別に解析した結果、歩道の認知症リスクの予防的な関係は、都会でのみ見られることも判明した。
結果を受けて研究グループは、「都市部では、近隣の歩道面積割合が高いことが認知症発症に予防的である可能性が示された。認知症にやさしい町づくりのために、都市部では歩道の設置によるウォーカブルな都市デザインの推進が重要かもしれない」と述べている。