2021年2月1日 森林浴習慣に労働者のストレス対処力を高める可能性 今後は長期的な効果を明らかにしていくことが重要

筑波大学と森林研究・整備機構森林総合研究所らの研究チームは、森林浴習慣が労働者のストレス対処力を高める可能性があることを明らかにした。

わが国では、働く人のメンタルヘルス不調が大きな問題となっている。また、その発生を予防することが重要と考えられており、ストレスにうまく対処できる力がどのような生活習慣と関連するかについて、多くの研究が行われている。その中で、森林浴など自然との触れ合いがメンタルヘルスに良い影響を与える可能性が注目されており、これまでの研究から、一回(数時間)の森林浴をした場合、リフレッシュ効果などがあることが数多く報告されている。しかし、勤労者が森林浴を習慣として行った場合のストレス対処力との関連については明らかになっていなかった。

今回、筑波研究学園都市内の研究者など労働者を対象とした研究が行われ、森林散策や緑地散歩の頻度が高いほど、ストレス対処力が統計的に有意に高いことが分かった。この結果は、年齢、最終学歴、世帯年収といった個人特性や、運動や喫煙といった他の生活習慣の影響を考慮しても有意となった。

わが国の国土面積は、約3分の2が森林で占められており、都市公園や公共施設緑地等の整備も進められている。こうした点等も踏まえ、今後の研究については、森林浴習慣によるストレス対処力への長期的な効果を明らかにしていくことが考えられている。

 

森林浴や緑地散歩の習慣とストレス対処力との関連を解析

労働者のメンタルヘルス対策では、メンタルヘルス不調の発生を予防することの重要性が指摘されている。その中で、ストレスに上手く対処できる力、いわゆる「ストレス対処力」が良いメンタルヘルスを保つ上で必要であることが注目されており、労働者のストレス対処力がどのような生活習慣と関連があるかについて、多くの研究が行われてきた。また、一回、数時間の森林浴を行った場合、リフレッシュ効果などがあることが数多く報告されており、森林浴への関心も世界的に高まりつつある。

習慣的に自然環境に触れあうことは、労働者のメンタルヘルスに良い影響を与える可能性があるものの、勤労者が森林浴を習慣として行った場合のストレス対処力との関連については明らかになっていなかった。そこで今回の研究では、つくば市の労働者を対象とした調査結果から、森林浴や緑地散歩の習慣とストレス対処力との関連について解析を行った。

 

森林散策や緑地散歩の頻度が高いほど高SOC群のオッズ比が有意に高い

研究では、茨城県つくば市の労働者を対象に、筑波研究学園都市交流協議会労働衛生専門委員会が2017年に実施した「第7回生活環境・職場ストレス調査」のデータを二次利用し、20歳から59歳までの男性3965人、女性2501人の計6466人(平均年齢42.7歳)について解析を実施した。

ストレス対処力については、日本語版のSOC尺度(sense of coherence(首尾一貫感覚))を用いて測定し、森林浴習慣については「森林散策(ハイキング、自然観察、山歩き、山仕事、山中でのキャンプ等を含む。都市公園に行くことは除く)には、どのくらいの頻度で行きますか」という質問で聞き取りを行った。緑地散歩習慣については、「緑地(都市公園など。森林を除く)には、どれくらいの頻度で行きますか」という質問で聞き取りが行われた。さらに、SOC総得点の平均値と標準偏差から、対象者を低SOC群、中SOC群、高SOC群に分け、森林散策や緑地散歩の頻度とSOC値との関連を解析した。

その結果、森林散策の頻度は週1回以上が2.4%、月1~3回が11.8%、年1回~数回が41.8%、ほとんど行かないが44.1%だった。緑地散歩の頻度は、週1回以上が16.9%、月1回~3回が30.3%、年1回~数回が28.7%、ほとんど行かないが24.0%だった。

また、森林散策や緑地散歩の頻度が高いほど高SOC群となるオッズ比が有意に高く(ストレス対処力が高い)、年齢、最終学歴、世帯年収、婚姻状況、居住地といった個人特性や、運動や喫煙といった他の生活習慣の影響を考慮しても同様の傾向を示した。

 

自然環境との接触がストレス対処力をいかに高めるか追跡調査を実施

今回の研究により、森林浴や緑地散歩の頻度が高いほどストレス対処力が高いことが明らかになった。森林浴や緑地などの自然と触れあう習慣が、労働者のストレス対処力を高める可能性が窺える。今後の研究では、自然環境との触れあいがストレス対処力をいかに高めるかについて追跡調査を実施し、森林浴習慣によるストレス対処力への長期的な効果を明らかにしていくことが考えられている。


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