(国研)森林研究・整備機構森林総合研究所とソフトバンク(株)は、電動ロボットの活用によるスマート林業の実現とゼロエミッションに向けて、2021年度に電動四足歩行ロボットの歩行実験を行い、ロボットが林業で担える作業を検証するための実証実験を2022年6月から開始した。
この実証実験は、2021年度に森林総合研究所とソフトバンクが(国研)新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)から受託した「NEDO先導研究プログラム/農山村の森林整備に対応した脱炭素型電動ロボットの研究開発」で実施するもの。2021年度は、北海道下川町などにある造林地や急傾斜地などの過酷な環境下で電動四足歩行ロボットの歩行能力について調査・検討を行い、一定の条件下であれば斜面や障害物などがあっても安定した歩行ができることを明らかにしている。
2022年度は、電動四足歩行ロボットが造林地の巡回や監視、荷物の運搬などの作業を担えるかを検証する試験を実施し、作業が可能な地表面の凹凸や柔らかさ、傾斜などを明らかにするとしている。また、造林地で設定したルートを自動で歩行する機能や、複数台のロボットで協調作業を行うためのシステムの開発に取り組む方針だ。さらに、造林地の多くを占める携帯電話の電波が届かない場所でもロボットを運用するために、衛星通信や長距離・広範囲をカバーするWi‐Fiなどの複数の通信手段を用いて、造林地でロボットが自動で歩行するための通信環境の構築と検証を行うとしている。
こうした取組の中で、ソフトバンクは自動歩行機能に高精度測位サービス「ichimill(イチミル)」を活用するほか、通信事業者として持つ知見やノウハウを提供する。
実験は、下川町と茨城県つくば市で計2回行われる予定。ロボットは米国Boston Dynamics社の「Spot(スポット)」が利用される。
テクノロジーを活用してスマート林業の早期実現を目指す
国内の人工林は、約半分が伐採時期を迎えて木材の利用が拡大している。しかし、林業従事者の高齢化や担い手不足、少ない伐採収益のために森林の再造林が進んでいない。また、こうした状況は、二酸化炭素の吸収量の低下や森林の荒廃による災害の増加などにつながると懸念されている。さらに、林業は人力作業が多いため、省力化と労働災害の削減が大きな課題となっている。
森林総合研究所とソフトバンクは、林業が抱えるこうした課題に対し、ロボットをはじめとしたテクノロジーを活用してスマート林業の早期実現を目指すとしている。