東京都は4月26日、介護支援専門員の法定研修の見直しを国に求める緊急提言を発表した。
特に更新研修の負担が受講料も含めて大きいと指摘。「人材確保の支障となる」と踏み込み、ケアマネジャーの負担を軽減する措置を講じるよう要請した。
介護ニーズが拡大していく一方で、ケアマネの人数は十分に増えていない現状を踏まえた主張。このままでは人材不足が加速し、高齢者が必要なサービスを速やかに受けられない問題が深刻化するという危機感がある。
東京都は緊急提言の中で、「とりわけ資格の更新時に、実務に従事しながら長時間の研修を受講することは、高額な受講料とともに大きな負担」と問題を提起。「高齢者の在宅生活を支えるうえで中核的な役割を担う介護支援専門員を確保していくためにも、研修制度の見直しは喫緊の課題」と訴えた。
加えて、「同じ内容の研修の繰り返しについて見直しが必要との声が上がっている」とも指摘。「質の担保と負担軽減が両立した研修制度となるよう見直し、特に実務に従事する受講者の負担に配慮した見直しとすること」と呼びかけた。
以下、提言全文
提言 介護支援専門員の法定研修を見直すこと。
(説明)
〇国はこれまで、資格更新制の導入や研修の強化、主任介護支援専門員制度の創設、試験の受験要件の見直しなどにより、介護支援専門員の資質や専門性の向上を図ってきた。これに伴い、介護支援専門員は資格取得時に87時間、5年毎の資格更新時に最大88時間の法定研修受講が必要となっており、とりわけ更新時に、実務に従事しながら長時間の研修を受講することは、高額な受講料(都で専門研修Ⅰ・Ⅱを両方受講する場合、計5万8300円)とともに大きな負担となっている。
○研修カリキュラムは、その科目、時間数、実施方法(講義又は演習)等を国が全国一律の基準で定めており、介護支援専門員の実務に必要な内容が幅広く網羅されている一方、研修や科目間で内容の重複が散見され、資格更新時の研修受講者や都が設置する研修向上委員会からは、同じ内容の繰り返しについて見直しが必要との声が上がっている。
○都においては、研修の全面オンライン化や動画配信形式の活用などにより、受講者負担の軽減に配慮しているが、時間数の短縮はできないため、今なお受講者の負担は大きい。
○また、令和6年度の介護報酬改定において、特定事業所加算の評価が充実されたことに伴い、ヤングケアラー、障害者、生活困窮者、難病患者等、高齢者以外の対象者への支援に関する事例検討会・研修等に参加していることが要件に追加されたことは、多様化・複雑化する課題に対応するための取組を促す効果が期待できる一方、研修受講に係る負担は更に増大することが見込まれる。
〇近年、都内で実務に従事する介護支援専門員数は、令和元年度をピークに横這いで推移しており、今後、介護サービス需要の拡大が見込まれる中、将来的に介護支援専門員の不足が懸念される。
○こうした状況の中、介護支援専門員資格更新時の過度な負担は、人材確保の支障となる恐れがあり、介護が必要な高齢者の在宅生活を支える上で中核的な役割を担っている介護支援専門員を確実に確保していくためにも、研修制度の見直しは喫緊の課題である。
よって、介護支援専門員の安定的な確保に向けて、質の担保と負担軽減が両立した研修制度となるよう、見直しを図られたい。見直しに当たっては、特に実務に従事する受講者の負担に配慮したものとすること。