(一財)森記念財団都市戦略研究所が10月18日に発表した、2016年版の「世界の都市総合力ランキング(Global Power City Index)」によると、2008年の調査開始以来8年連続で4位であった東京は、初めて順位が変動し、パリを抜いて3位となった。その要因として、海外からの訪問者数の増加(「文化・交流」)、為替変動(円安)などによる米ドルベースでの物価水準や住宅平均賃料の下落(「居住」)、羽田空港の国際化(「交通・アクセス」)などがあげられている。また、強みである「経済」では、依然として42都市中トップを維持している。
このランキングは、世界の主要42都市を対象に、都市の力を現す様々な分野を総合的に評価した日本発のランキングであり、国や東京都の政策評価指標としても広く活用されている。
総合ランキングの上位についてみると、1位のロンドンは、「文化・交流」での圧倒的な強みなどによって、2位以下を大きく引き離して5年連続の1位。2位のニューヨークは、「研究・開発」でトップを堅持しているものの、全体的に大きな変動は見られなかった。昨年3位であったパリは、同年11月の同時多発テロなどの影響もあって、海外からの訪問者数などが減少し、「文化・交流」などでスコアを落とし4位となった。
また、アジアでは、急成長を続けていたシンガポールは、順位は5位と維持したもののスコアを落としており、GDP成長率の落ち込み、従業者数の減少など、「経済」で停滞の兆しが見られる。その一方で、上海はすべての分野でスコアを上げており、昨年の17位から12位へ大きく躍進した。
アクター別ランキング
経営者や研究者など5つのアクターの視点から評価したアクター別ランキングをみると、経営者では、昨年と同様にロンドン、シンガポール、香港が上位3都市であった。分野別ランキングの経済分野で第1位の東京は、「企業や商取引等の一定以上の集積」野評価が高いものの、「ビジネスの成長性」や「ビジネスの容易性」でスコアが低く、順位を1つ上げたものの7位にとどまっている。
研究者では、「質の高い研究機関・研究者・指導者の存在」や「研究者受入態勢」で高い評価を得た結果、9年連続でニューヨークが首位を維持している。一方、東京は、上位2都市(ニューヨーク、ロンドン)と比べて「質の高い研究機関・研究者・指導者の存在」での世界トップ200大学や主要科学技術省受賞者数、「研究者受け入れ態勢」での外国人研究者の受け入れ態勢などのスコアが低いことから、昨年に引き続いて3位にとどまっている。
観光客では、昨年に引き続き上位4都市の順位はロンドン、パリ、ニューヨーク、イスタンブールとなった。東京は、「食事」や「買物」で高い評価を得ているほか、物価水準や海外からの訪問客数のスコアが大幅に上昇したことから、昨年の6位から5位に上昇したものの、「文化的魅力や接触機会」と「一定水準以上の宿泊施設」で改善が必要とされている。
生活者では、パリ、ロンドン、ニューヨークが昨年と同様に上位を占め、東京は「購買環境」のスコアの上昇により昨年の8位から6位に順位を上げたものの、CO2排出量等の環境指標で伸び悩み、ヨーロッパの各都市と開きがある。