農林水産省の生物系特定産業技術研究支援センター(生研支援センター)は、東京農工大学を代表機関とする研究グループは高い耐火性能を持つCLT(直交集成板)部材の開発に取り組み、CLTを使用した外壁と間仕切壁について2時間耐火構造の国土交通大臣認定を取得した。
この外壁を用いた11階建ての木造高層耐火ビルが建設され、さらに、この間仕切壁を用いた15階建ての木造高層耐火マンションも建設中。
生研支援センターは、「農林水産研究イノベーション戦略」等の国が定めた研究戦略等に基づいて行う基礎的な研究開発を、大学、高等専門学校、国立研究開発法人、民間企業等に委託することにより実施している。
特に、近年画期的な技術開発が進展している異分野の革新的技術を取り込みながら事業化・商品化といった出口を念頭に行う研究や、『知』の集積と活用の場における技術革新を通じたオープンイノベーションによる研究、生産現場における革新的技術体系の実証を行う研究、次世代の技術体系を生み出す先導的な研究を推進している。
生研支援センターでは、農林水産業や食品産業の分野で新事業の創出や技術革新を目指す研究に資金を提供しており、得られた研究成果を広く知ってもらうため、研究成果を分かりやすく紹介する取組を実施している。
今回、紹介しているのは、CLT(直交集成板)を使用した2時間耐火構造の外壁と間仕切壁を開発した研究成果。これまでは1時間耐火構造のCLT外壁しかなかったため、使用できる建築物の階数に制限があった。そこで、研究グループでは、CLT外壁の表面を耐水性強化石膏ボードと軽量気泡コンクリートパネルで被覆することで、2時間の火災でも内部のCLTが焦げたり燃えたりしない耐火性能を持たせることに成功した。
これにより、CLTを躯体とした外壁を中高層ビルにも利用できるようになり、CLT外壁を用いた11階建ての木造高層耐火ビルが建設された。さらに、CLT間仕切壁についても2時間耐火構造の認定を取得し、これを用いた15階建ての木造高層耐火マンションが建設中。
CLTは工場内で一部の材料を組み立ててから現場に搬入するプレハブ化による施工工期短縮が期待でき、接合具がシンプルなので熟練工でなくとも施工が可能。
1990年代にオーストリアを中心に研究開発が始まり、海外では10階建て以上のビルが竣工するなど、鉄やコンクリートに並ぶ建築材料として認知されている。しかし、わが国でCLTを中高層建築物に利用するためには、厳しい防火規制をクリアする必要があり、木造高層ビル建築を普及する上でのネックとなっていた。
国は、「CLT活用促進に関する関係省庁連絡会議」を設置し、CLTの幅広い積極的な活用に取り組んでいる。今後、CLT部材を利用した木造高層耐火ビルの建設が増えることで、国産木材の新たな需要や新しい産業分野が創出されるものと期待されている。