2040年には65歳以上の15%、およそ584万人が認知症になる − 。
厚生労働省が今月に公表した最新の推計だ。1人暮らしの高齢者も増えていく今後、認知症になっても尊厳を持って地域で暮らしていける環境の整備が大きな課題となり、社会全体でその解決に取り組んでいくことが求められている。
今年度に入り、国が新たなハンドブックを公開した。
テーマは「認知症の人と家族の思いにふれあう」。認知症とともに人生を歩んでいる当事者の声を届けることに重きを置いた内容だ。
幅広い関係者のイメージの転換、接し方の変化を促す狙いがある。今を前向きに、楽しみながら生きる姿勢、日頃から感じることや希望、戸惑いなどが多く表現されており、介護職も様々なシーンで活用することができそうだ。
「認知症の人とそうでない人を線引きせず、認知症の人が普通に暮らせる文化・地域社会を醸成する一助となれば」
厚労省とともにハンドブックを作成したNTTデータ経営研究所の西口周氏(ライフ・バリュー・クリエイションユニットプロジェクトリーダー)のコメントだ。「当事者へのヒアリングを行う中で、浮き沈みしながらも前を向いて生活しておられる様子や、『普通に接してほしい』という思いを多く聞くことができ、私自身のイメージも変化した」という。
ハンドブックには計77人の声がまとめられた。診断直後の感情、日常生活での工夫、ピアサポートの力、周囲の人へのお願いごとなど、それぞれの実体験に基づくリアルな胸の内が、当事者の力になりたい、良い関わり方を知りたいという支援者へ伝わるように描かれている。
「家族には言えないけど支援者になら言えることもある。そういう話を聞いてくれる人がいるといい」「普通の人と同じように、美味しいものを食べたいし色んな所に出かけたい。普通に、横並びの関係で声をかけてくれると嬉しい」「失敗したら恥ずかしい、失敗してはいけない、という社会では暮らしにくい」
そんな言葉が多く綴られている。サブタイトルは、「聞いてください。認知症とともに今を生きる私たちの声」。ハンドブックはWebでいつでも閲覧できる。
記事画像提供:厚生労働省令和5年度老人保健健康増進等事業(認知症の人や家族の心理的・社会的サポートに関する調査研究事業 NTTデータ経営研究所)※ 無断使用、複製はご遠慮ください