国土交通省は、3月14日に開催した第53回新道路技術会議(委員長:那須清吾高知工科大学経済・マネジメント学群教授)において、令和7年度から3年以内で道路政策の課題の解決を目指す研究課題を審査し、新たに5件を採択することとした。
国交省では、「学」の知恵、「産」の技術を幅広い範囲で融合し、道路政策の質を一層向上させるため、平成16年10月から新道路技術会議を設置している。
令和6年10月1日から同年11月11日まで、令和7年度から取り組む技術研究開発の募集を実施したところ、9件の応募があり、新道路技術会議による審査の結果、以下の5件を採択することとした。
今回採択された各技術研究開発の課題は、新道路技術会議での審査内容に基づき、実施内容の調整等を行った上で、令和7年度の技術研究開発を進めていく。採択された研究(研究テーマ名と応募時の提案概要等)は以下の通り。
〈ソフト分野〉
▽生活道路における工・心理・情報学の融合によるデータ循環型交通安全対策の研究=研究代表者名:小嶋文(埼玉大学)。
提案概要:生活道路の法定速度30㎞/hを見すえ、工・心理・情報の学際的観点から速度抑制にかかる心理解明とデータ活用手法をデータ循環型で検討し、物理的デバイスの効果的設置方法と適用範囲拡大に向けた技術基準の提案、効果予測手法を提案する。
▽望ましい事業評価の指針策定にむけた研究開発=研究代表者名:小池淳司(神戸大学大学院)。
提案概要:諸外国の最新の事業評価動向を調査したうえで、事業評価における専門家判断の役割と実施内容を明確にし、社会的効率性と権利の両概念に基づく定量・定性的評価手法をとりまとめ、事業評価担当者向けの「事業評価指針(案)」を策定する。
〈ハード分野〉
▽生成AIと深層学習を活用した斜面災害リスク評価および統合監視プラットフォームの開発=研究代表者名:安原英明(京都大学)。
提案概要:AI技術を活用し、潜在的な災害危険個所の特定手法を確立する。また、多角的な実験を通じて地表面傾斜の性能評価を実施し、実際の計測データから警戒レベル管理基準値を設定する。さらに、従来型AIと生成AIを駆使して斜面災害の予測、検知、対応の統合監視プラットフォームを開発する。
▽製作・施工の合理化に貢献する効力ボルト摩擦接合のFRP部材への実用化についての技術研究開発=研究代表者名:中村一史(東京都立大学)。
提案概要:FRP部材の高力ボルト摩擦接合では、FRPのクリープ変形により軸力が低下するため、高い摩擦力を確保でき、現場施工も容易となる高力ボルトを用いた接合方法を開発して、一般的なFRP部材の接合方法として確立する。
▽自律型打音検査装置についての技術提案開発=研究代表者名:横田有為(東北大学)。
提案概要:持続可能なインフラメンテナンス実現のため、高精度・高効率で安全にトンネル内壁の状態を把握する「自動打音検査」と「ロボット」が融合した融合した自律型打音検査装置を開発する。大学の要素技術と企業の事業実績を基に、産学連携での装置開発・実証試験を行う。