2023年2月8日 文化庁にノウハウの情報提供など要請 総務省が外国人日本語教育調査踏まえ

総務省が実施した「外国人の日本語教育に関する実態調査―地域における日本語教育を中心として―」の結果、市町村から「外国人のニーズをどう拾い上げればよいか分からない」、「最低限把握すべきニーズの内容が分からない」といった意見があったことを踏まえ、同省は、地方公共団体が求めるノウハウなどの情報提供や支援を実施するよう、文部科学省や文化庁に対し1月20日付で通知を行った。

令和4年6月には約296万人と過去最多となるなど在留外国人数は、将来的にも増加が見込まれる中、これら外国人に対する日本語教育に関する施策は、国や地方公共団体の責務とされている。しかし、日本語の学習を希望する外国人でも必要とする日本語教育は一様ではなく、外国人の集住地域や散在地域があること、また、日本語教育を担う人材についても地域に偏りがあるなど、日本語教育をめぐる状況は地域差が大きい。

総務省の今回の調査は、地方公共団体における日本語教育施策の取組状況の実態を明らかにし、地域における日本語教育を推進するための国の支援の在り方の検討に資するために実施したもの。

 

教室数は過去10年で1.4倍に

調査によると、令和3年11月時点での日本語教室は1349か所に達し、過去10年間で約1.4倍となっているが、調査を実施した20市町村における取組状況をみると、個々の外国人のニーズを把握しているのは4市町村にとどまっていた。

ニーズを踏まえて、日本語教室を開催している事例をみると、1)外国人が希望する開催曜日や授業内容を反映したカリキュラムを作成した例や、2)「日本人と交流しながら日本語に興味をもってもらう体験型の授業を」といった希望を踏まえ、七夕や折り紙など日本の文化等を通じて、日常会話を学習するカリキュラムを実施している例が見られた。

一方で、「調査で最低限把握すべき事項が分からない」「日本語教育が本当に必要な人から情報が得られているか心配」など、個々の外国人のニーズの把握に苦慮している市町村があった。

 

オンラインでは手元が見えない

また、コロナ禍の中で、オンライン講座を取り入れる市町村が調査した20市町村中7市町村あった。オンライン講座を実施している市町村では、「オンライン講座は居住地域に制限されずに参加できるため有効」「読み書きの授業では手元が見えず、受講者の理解度が分からない」「一方的な説明となる傾向があり、補助者による受講者への支援が難しく、ノウハウが必要」などいった意見があった。

オンライン講座を実施していない市町村からは「人員やノウハウがなく、国や都道府県による市町村単位に限らない運用を求める」といった意見が寄せられた。

日本語指導者育成を実施していたのは20市町村中、半数の10市町村だった。市町村からは、専門性を有する日本語教師は、人口が中小規模以下の市町村では育成・確保が困難。都道府県において、日本語教師の育成措置を講じたり、採用可能な日本語教師の所在情報を調査してほしいなどの要望があった。

また、市町村からは、日本語教育を単独では実施困難であり都道府県の支援を求める意見があった。文化庁の補助事業の活用により、積極的な市町村への支援が成果を上げている例がみられることから、総務省では、支援例として、①都道府県が文化庁の補助事業を活用してコーディネーターを市町村に派遣し、アンケート調査や教育カリキュラムの作成等を支援した結果、外国人の要望に併せた日本語教室を開催している事例や、②都道府県が日本語教育人材・機関と、市町村や日本語教室等をつなげる「日本語教育等人材バンク」を創設し、市町村に日本語教師を派遣している事例を示し、都道府県による市町村の支援は重要だと指摘している。

一方で、管内市町村からコーディネーターの派遣等による支援を求める声を把握しつつも、ノウハウ不足を理由に、市町村への支援を十分に検討できていない都道府県があった。


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