2017年6月12日 教育費の公支出増が重要 日本の教育システムの強みと弱み

高い学力と「生きる力」を子供たちにつけさせる全人的な教育は、世界的に高く評価されているが、教育費に対する公財政支出割合が国際的に極めて低く、また、社会人が学びやすい環境の整備が遅れていること、そして何より課題に対処すべき教員が多忙すぎる―。日本の教育の強みと弱みに関する調査報告で、わが国教育を取り巻く現状を明るみに出す指摘が示された。

平成30年度から開始する第3期教育振興基本計画の策定に向けた検討に役立てようと、文部科学省がベネッセコーポレーションに調査・分析を依頼していたもので、「平成28年度 教育改革の総合的推進に関する調査研究~国際的な視点から見た日本の教育に関する調査研究~」として取りまとめられた。

日本が今後も高い教育成果を出し続けていくための課題として報告書では、1)日本の就学前教育に対する公財政支出割合は、国際的に見て極めて低い、2)経済社会が急速に変化する中で、職業の在り方が様変わりしているが、大学、大学院の正規課程」への社会人入学者数は、国際的に見て低い状態が続いている、3)社会全体の急速な変化の影響で、学校の抱える課題も複雑化・困難化してきている、4)これらの諸課題にまず対処すべき教員が現状でも極めて多忙なことを挙げている。

子育てや教育にお金がかかりすぎることが、理想の子ども数を持たない理由の第1位というデータもあり、教育費の公財政支出割合を高めることが、教育政策だけでなく少子化対策としても重要になってくるだろう。

また、第4次産業革命が進展する中で、生涯を通して社会で活躍していくためには、社会に出た後も学び続け、新たに必要とされる知識や技術を身に付けていくことが求められている。大学等では、社会人が学びやすい環境の整備を行ってきたが、大学や大学院の正規課程で学ぶ社会人が国際的に極めて低いのが現実。経済界などからも国内、特に国立大学において学び、新たなスキルを身につけることができる課程の設置を求める声が強く出されている。

社会の急速な変化は学校にも影響を及ぼし、特別支援教育の対象となる児童生徒や日本語指導が必要な外国人児童生徒らが増加の一途をたどり、さらに、日本の子供の貧困率が年々悪化している。

いじめ、児童生徒の暴力行為、不登校、児童虐待など課題が複雑化・多様化している。現状の指導体制のままで今後も世界が注目する教育効果を上げていくことは困難だろう。

こうした状況の中、中教審は「チームとしての学校の在り方と今後の改善方策について」「これからの学校教育を担う教員の資質能力の向上について~学び合い、高め合う教員育成コミュニティの構築に向けて」「新しい時代の教育や地方創生の実現に向けた学校と地域の連携・協働の在り方と今後の推進方策について」といった各答申において、対応策を提言している。

具体的には、必要な教職員定数の拡充や、教職員と心理や福祉等の専門スタッフの配置の充実、学校のマネジメント機能の強化といった「チーム学校」の実現に必要な体制の整備や、教員育成指標や教員研修計画の策定及び教育委員会と大学等が連携して行う協議会の整備等による校長及び教員の資質の向上を図るための新たな体制の構築、コミュニティ・スクールと地域学校協働本部による学校と地域との連携・協働体制の確立など。

これらの政策を実現させることで、深刻度を増している課題を解決し、日本の優れた教育を持続・発展させることが期待される。


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