政府は24日、がん対策において6年間の指針となる「第3期がん対策推進基本計画」を閣議決定した。予防策の目玉である受動喫煙に関する数値目標の記述は見送り、関連法案が提出後に改めて閣議決定する考えだ。
第3期がん対策推進基本計画は、①科学的根拠に基づくがん予防・がん検診の充実、②患者本位のがん医療の実現、③尊厳を持って安心して暮らせる社会の構築‐の3本柱で構成。決定は当初、夏の予定だったが、受動喫煙防止の扱いをめぐって厚生労働省と自民党の調整が難航し、ずれ込む事態となった。
■ がん検診を50%に
予防の具体策では、現在30%~40%のがん検診の受診率を50%まで引き上げることや、検診で罹患の疑いがあるとされた人への精密検査の受診率を90%にまで向上させることなどで、がんの死亡率低下を目指す。さらに、2016年の国民健康・栄養調査で18.3%だった成人の喫煙率を2022年度までに12.0%にすることや、生活習慣病のリスクを高める量を飲酒している割合を男性は14.6%から13.0%に、女性は9.1%から6.4%にすることなども目標に掲げている。
医療面では、遺伝情報を基に個々の患者に合った治療法を選ぶ「ゲノム医療」を推進。世代別で異なる問題への対応策も充実させるよう求めた。今回初めて加わった思春期から若年成人(AYA世代)へは、進学や就労、結婚、妊娠といった人生の節目に対応できるような相談体制や情報提供を整備していくこととした。人数の少ない小児がんについては、新薬の開発につながる研究を進めることや、病態に応じて小児がん拠点病院以外の医療機関でも診察や在宅医療が可能になるような体制を構築するよう訴えている。一方、団塊世代の高齢化などで急増化が予想される高齢世代に対しては、身体が弱っていたり、慢性疾患を患っていることが多く、標準的な治療を提供するかどうかの見極めが難しいと指摘。そのため、今後は関係学会などの協力のもとで、国がQOLの観点も含めた高齢者向けの診療ガイドラインを策定すべきだとしている。
また、がんとの共生として、診断時からの緩和ケアや就労支援、偏見、患者の自殺など様々な問題への対策も推進するよう提言。このほか、分野別の施策を支える基盤として、がん研究のさらなる推進や人材の育成、がんの教育・普及啓発にも力を入れていくことを付記した。
■ 加藤大臣「法案、早期に提出したい」
この日の閣議後記者会見で加藤勝信厚労相は、健康増進法の改正案について、「『望まない受動喫煙』をなくすというこの基本的な考え方については、合意を得ている」と説明。そのうえで提出時期に対し、「可能な限り早期に国会に提出したい」と明言した。
計画を協議してきたがん対策推進協議会では、「受動喫煙防止の数値目標を、2020年までに家庭や飲食店に限らず0%にすること」が満場一致で決まっている。