LIXILは今月から、愛知県大府市の有料老人ホーム「フラワーサーチ大府」で、トイレとセンサーを組み合わせる実証実験を始めた。期間は来月31日まで。
実証実験では、センサーによる〝排便管理〟機能を有するトイレを使い、本人の同意を前提として、入居者の排便の情報を自動で収集する。質の高いケアの提供、QOLの向上を後押しする狙い。介護職員の負担軽減も実現したい考えだ。
排便状況のチェックは、入居者の健康を管理するうえで非常に重要だ。通常、本人からのヒアリングや職員の目視などを基に行われているが、申告が曖昧だったり確認が間に合わなかったりして正確な把握・記録は難しい。本人、職員ともに精神的な負担も感じやすい。
実証実験で使われるトイレは、便座の裏側に付いたセンサーが排便を感知。形状、大きさなど排泄物の特徴をAIが分類する。集約された記録は、スタッフステーションの端末でプライバシーに配慮した形で確認できる。
開発に向けてLIXILは、自社の研究所のトイレに同様の仕組みを設置。職員の協力を得たうえで、約3000枚の画像をAIに学ばせて判別精度の向上を図った。
情報の収集や記録の自動化により、データの正確性が大幅に高まると期待される。これまで把握が難しかった認知症の人などの排便状況も、よりきめ細かくチェックできるようになると見込まれている。
このほか、入居者がトイレを利用したことを職員のスマホに通知、適切な介助行為を促す〝トイレ利用通知〟機能を使った実証実験も合わせて実施する。一般的にはトイレ内では転倒などのトラブルを防ぐため、職員による過度な巡回や頻繁な清掃・洗濯が行われているが、これを低減したい考えだ。
LIXILは実証実験の結果を踏まえ、こうしたトイレの製品化を本格的に進めていく方針。同社の広報担当者は今後について、「今回は施設での実証だが、ゆくゆくは訪問介護など在宅サービスの場での活用にもつなげていきたい」と話した。