2022年8月25日 抹茶の継続摂取で睡眠の質が向上 社会的認知機能の改善も確認

(株)伊藤園と筑波大学発ベンチャーの(株)MCBIは共同で、認知症の前段階である軽度認知障害(MCI)と主観的認知機能低下(SCD)の高齢者を対象にした臨床試験「抹茶の認知機能低下抑制効果を評価する試験」を行い、抹茶を継続摂取することで睡眠の質の向上と社会的認知機能の改善を確認した。

抹茶は古くから日本国内で親しまれてきた飲み物だが、その成分である「テアニン」にはストレス緩和、睡眠改善、「カテキン」には血中コレステロールや体脂肪の低下、さらには両者ともにワーキングメモリーの改善などの効果があると報告されている。また、抹茶の短期間の摂取効果として、中高齢者の「注意力」や「判断力の精度」を高めることが報告されている。

今回の臨床試験は、抹茶の長期摂取の介入前後に、試験参加者への認知機能検査、血中バイオマーカー測定、血中動態分析、脳イメージング(fNIRS、アミロイドPET)、睡眠調査などを実施し、抹茶の効果とバイオマーカーの変化を総合的に解析するため行われた。

具体的には、60歳から85歳の高齢者を中心とした939名を募集し、認知症の前段階である軽度認知障害(MCI)、プレクリニカル期にあたる主観的認知機能低下(SCD)と診断された99名の試験参加者を対象に、抹茶の長期摂取による認知機能等への影響を、二重盲検プラセボ対象ランダム化比較試験により検証した。抹茶群では、抹茶カプセル(1日あたり抹茶2g摂取)を12ヵ月間摂取し、プラセボ群では着色コーンスターチを充填したカプセルが用いられた。試験開始時から12ヵ月までの各評価項目の変化を混合効果モデルにより統計的に検証した。

 

「睡眠の質」と「社会的認知機能(顔表情からの感情知覚)」への効果を確認

睡眠の質については、ピッツバーグ睡眠質問票(PSQI)を用いて評価した結果、抹茶軍でPSQIスコアが低下し、睡眠の質が向上する傾向が示された。

認知機能に関しては、認知症やMCIのスクリーニング等に用いられる神経心理学的検査(MMSE‐J、MoCA‐J等)での得点で抹茶群とプラセボ群の間に差はみられなかったが、コグニトラックス検査(CNS Vital Signs 日本語)による認知機能の領域別の評価では、抹茶群はプラセボ群に比較して、表情認知テストで表される社会的認知、具体的には顔表情からの感情知覚の精度が有意に改善することが確認された。

 

メカニズムの解明への期待

伊藤園では、お茶の価値を科学の目でとらえ、「人生100年時代を豊かに生きる」ための生活改善提案に向けた研究開発を行っている。その中で、超高齢社会に生きる高齢者が、より良い日常生活を送る上で、「睡眠の質」や「社会的認知機能(顔表情からの感情知覚)」を維持していくことは極めて重要であると考えている。今後、この研究で確認された抹茶の継続摂取による「睡眠の質の向上効果」や「社会的認知機能の改善効果」の関連性やメカニズムの解明、その他の検査内容の解析などを進めていくとしている。この取組を通じて、超高齢社会に生きる高齢者の豊かな生活への貢献によって、健康で豊かな生活と持続可能な社会の実現に寄与していく考えだ。


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