肺炎など感染症への切り札とされる抗菌薬(抗生物質)について、日本人の64.0%が「ウイルスをやっつける」と誤った認識を持つことが、国立国際医療研究センター病院の調査で明らかになった。正しい知識を持つ人の割合はEU諸国と比べかなり低く、同センターは「一般国民の抗菌薬(抗生物質)に関する知識は不十分だ」としている。
調査は今年8月に、インターネットを通じて実施。10代から60歳以上の男女688人から回答を得た。
「抗菌薬・抗生物質という言葉を聞いたことがあるか」という質問に対し、「聞いたことがあり詳しく知っている」と答えた人は35.5%。「聞いたことはあるが詳しくはわからない」(60.2%)を合わせると、回答した人の約96%が耳にしたことがあるとしている。
「抗菌薬(抗生物質)はウイルスをやっつけるか」という問いに対し、「あてはまらない」と正しい回答をした人は23.1%にとどまった。これはEUの中でも正答の割合が最も高かったスウェーデン(74.0%)の3分の1以下、EU全体の平均値(43.0%)の約半分、最も低いギリシャ(23.0%)と比べても同程度の水準だった。
さらに、ウイルスが原因のかぜに効果が無いにも関わらず、正しく理解していた人は35.1%のみ。正答率を比較すると、EUトップクラスをほこるスウェーデン(85.0%)やフランス(78.0%)、イギリス(78.0%)などには遠く及ばなく、EU内で最低だったポルトガルの37.0%も下回る結果となっている。
一方、抗菌薬(抗生物質)の不必要な使用について、「効果が薄れる」と答えた人は67.3%、処方された抗菌薬(抗生物質)に対し、「飲み切るべき」と答えた人の割合は63.4%など、飲み方に関する知識は半数以上の人が持っていることもわかった。
抗菌薬(抗生物質)が頻繁に使われた場合、薬が効かなかったり、効きにくくなったりした細菌が生き残る。こうした状況が進むと、感染症の治療だけでなく手術時の感染予防など、様々な場面で医療が困難になる。国連は今年4月、「抗生物質が効きにくい薬剤耐性菌が世界的に増加し、危機的状況にある」と各国に勧告。このままでは薬剤耐性菌による病気で、2050年までに年間で1000万人が死亡する恐れがあると警鐘を鳴らしている。