「日本国民は、恒久の平和を念願し、人間相互の関係を支配する崇高な理想を深く自覚するのであつて、平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した。われらは、平和を維持し、専制と隷従、圧迫と偏狭を地上から永遠に除去しようと努めてゐる国際社会において、名誉ある地位を占めたいと思ふ。われらは、全世界の国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免かれ、平和のうちに生存する権利を有することを確認する」
これは憲法前文の一部だが、日本財団が17歳から19歳までの若者を対象に行った意識調査で、広く知られたこの文章を、ハイティーンの約4割が「読んだことがある」と答えた。一方で、同数が「読んでなかった」と回答した。戦後直後に書かれたもので、一見、難解な文章となっているが、6割が内容を理解。一方で、文章としてみると、8割以上が「わかりづらい」と答えている。
□前文の内容6割超が「わかった」
調査では、憲法前文を読んだ経験について聞いた。読んだことが「ある」「ない」ともに41.0%。読んだ時期は中学生時代が55.9%で最多で、次いで高校時代が28.9%、小学生時代は13.2%となった。
内容の理解度をみると、「なんとなくわかった」という回答が最も多く54.2%。「よくわかった」(9.5%)も含めて63.7%が理解したと答えている。「わからなかった」は36.3%だった。
また、前文を文章としてみた場合、「わかりにくかった」が48.6%、「わからない点がある」が34.4%。「わかりやすかった」は17.0%に留まった。わかりにくかった、わからない点としては、「意味のわからない単語が出てきた」「言葉が難しく、また堅苦しいため、理解に苦しんだ」「難しい言葉が使われている」など、難しい単語や言葉遣いが多く用いられている点があげられた。
さらに、普段使わない言葉や古い言い回しが用いられている点や、文章が長い点、視覚的にも読みにくい点などが多く挙げられた。
□基本的人権の前文明記、「必要」は4割
憲法の〝三原則〟である①国民主権、②基本的人権の尊重、③平和主義についても、前文から読み取れたか聞いた。国民主義は「読み取れた」78.9%、「読み取れなかった」21.1%、基本的人権の尊重は「読み取れた」74.3%、「読み取れなかった」25.7%、平和主義は「読み取れた」78.6%、「読み取れなかった」21.4%。
三原則の一つである基本的人権の尊重に関しては、前文に明記すべきか調査した。基本的人権の尊重は前文でなく11条に記載されているが、基本原則である以上、前文にも明記するとの意見がある。調査はこうした現状を踏まえたもので、42.9%が「必要」と答えた。「第11条に明記されており必要ない」は22.3%、「わからない」は34.8%という結果となった。
□「国際社会は平和を維持」は2割が現実踏まえた改正求める
前文に書かれた理念を巡っては、いくつかの議論があり、例えば第二段落にある「平和を維持し、専制と隷属、圧迫と偏狭を地上から永遠に除去しようと努める国際社会」の表現は、紛争が続く国際社会の歴史・現状と合わないといった指摘が聞かれる。意識調査では、40.3%が「前文はあくまで理想の宣言であり、このままでよい」との意見を表明。「厳しい現実を踏まえ改正すべきだ」は19.8%、「わからない」は39.9%にのぼった。
また、憲法前文に、わが国固有の価値としての歴史・伝統・文化等を明記すべきという意見があるなかで、歴史などの前文明記に関しては、「必要」が31.1%、「必要ない」が27.1%で、最多は41.8%の「わからない」だった。
憲法前文に明記すべき項目については、「天皇を国民統合の象徴とした民主的国家であるという国のかたち」が」最多の27.0%で、次いで、「共生の理念 家庭・家族の大切さ」が22.2%。22.8%が「わからない」と答えた。「わが国がこれまで歩んできた精神文化・和の精神」(20.6%)、「愛国心の涵養」(7.4%)といった回答もみられた。