NEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)の「余剰バガス原料からの省エネ型セルロース糖製造システム実証事業」の一環で、東レ㈱と三井製糖(株)は、タイにおいて、製糖工場で発生するサトウキビの搾りかす(バガス)などを原料として、各種バイオ化学品の共通原料となる食糧と競合しない植物由来の糖(非可食糖)を製造するシステムの実証に成功した。
これにより、石油由来の化学品を、食糧と競合しない植物(非可食植物)由来の化学品に代替することができ、循環型社会の実現が可能になる。糖液を分離膜により濃縮することで、従来比50%以上の省エネ化を実現するとともに、精製した非可食糖がエタノールやコハク酸製造の発酵原料として利用できることを確認した。
今後、東レと三井製糖は、非可食糖製造の事業化を目指すとともに、タイ国内でのシステム普及によるエネルギー政策への貢献につなげていく。また、製糖企業やでんぷん製造企業などのバイオマス保有者や化学メーカーと協力し、非可食植物由来の化学品を製造するサプライチェーンの構築を目指す。
NEDOはこのような先進的技術の海外実証事例を増やしていくことで、日本のエネルギー関連産業の普及展開やエネルギーセキュリティーの強化、さらには国内外のエネルギー転換・脱炭素化に貢献する。
タイ政府は「石油代替エネルギー開発計画(AEDP2015)」で再生可能エネルギー電源比率の引き上げを目標に掲げるとともに、今後の成長戦略を示す「タイランド4.0」で、バイオ化学品産業を将来の産業基盤の一つとして位置付けており、タイ国内で同産業が今後活発化していくことが見込まれている。
また、世界トップレベルのサトウキビ生産量を誇るタイでは、砂糖を生産する際に大量のサトウキビの搾りかす(バガス)が排出される。しかし、そのほとんどは有効利用されることなく「余剰バガス」として焼却処分され、PM2.5(微小粒子状物質)といった大気汚染物質を発生させるため、環境問題を含む大きな社会課題となっている。一方、「余剰バガス」は糖化させることにより、バイオエタノールや乳酸などのバイオ化学品を製造する際に原料となる食糧と競合しない植物由来の糖(非可食糖)の原料として有効利用できるが、消費エネルギーが大きく、また糖化酵素費も高価なため、より効率的なシステムになるように改良することが、製造技術の普及を図る上で必要。
NEDOはこのような先進的技術の海外実証事例を増やしていくことで、日本のエネルギー関連産業の普及展開やエネルギーセキュリティー、国内外のエネルギー転換・脱炭素化に貢献する。