世界保健機関(WHO)は9日、2015年の1年間にがんで約880万人が亡くなっているというレポートを公表した。世界の主要死亡原因で第2位。世界全体の死亡6人に1人はがんが原因となっており、全体の70%は中・低所得国で発生しているという。
死亡の約3分の1は、生活習慣や食事に関するリスクが要因。具体的には、高いBMI、果物や野菜の摂取不足、運動不足、喫煙、飲酒の5種類だ。このうち、喫煙は死亡の約22%に関係するなど、最も大きな要因の1つだとしている。
レポートによれば、がんが経済に与える影響は深刻で、しかも増加しつつあるという。2010年のがんの年間経済損失は、約1兆1600億ドル(約131兆円)と推計している。
一方肝炎やヒトパピローマウイルス(HPV)などの感染によるがんは、低・中所得国において、がん症例の 25%近くを占めると報告。
進行後に症状が表れ、診断治療に結び付きにくいことも多いという。2015年時点では、低所得国の公共機関で一般的に利用可能な病理検査部門ある医療機関は、わずか35%にとどまっている。高所得国の90%以上で受診可能とされている治療部門が低所得国では30%以下となっている。
■ がん患者、30年には2100万人
また、調査によれば、毎年新たにがんに罹患する人は約1400万人。このままのペースで増え続ければ、患者数は2030年に約2100万人まで膨れ上がると推測している。
レポートでは、がんのみつかる時期(ステージ)が遅いことを問題視。最適な保健システムとサービスを備えている国でも、多くのがんが治療困難な状態で発見されているとしている。そのため、がんの早期発見が重要だと主張。特に、イメージングや病理など専門的な診断サービスにアクセスするのが難しい国では、効果が大きいとしている。そのほか、早期発見は治療費を安くするとも指摘。例えば、高所得の国の研究では早期で診断された患者の治療費は、進行したがん患者と比べ、2分の1から4分の1程度に抑えられるとしている。
■ 早期診断ガイドラインを公表
WHOは、早期診断に向けた新しいガイドラインも公表。
1)がんに関する意識を高め、症状が表れた際に他人が注意できる環境を整える
2)医療従事者の研修実施など保険サービスを強化し、迅速で正確な診断を可能にする
3)がん患者が苦痛を減らせるよう安全で効果的な治療にアクセスできるようにする
‐などを行うよう求めている。
これらを踏まえて、WHOの非伝染病・メンタルヘルス担当副局長のオレグ・チェストノフ博士は、「政府ががんの早期診断に向けた動きを強化することは、世界的な健康目標を達成する鍵になる」と述べている。