2020年10月2日 平成30年度遺伝子組換え植物実態調査結果 輸入港の周辺地域での生育状況・交雑の有無を調査

農林水産省では、平成18年度以降、「遺伝子組換え植物実態調査」として、セイヨウナタネやダイズの輸入港の周辺地域において、遺伝子組換えセイヨウナタネや遺伝子組換えダイズの生育、その近縁種との交雑の有無を調査している。9月7日に平成30年度の調査結果が公表されたが、これまでの調査結果と同様、主に運搬時にこぼれ落ちた種子に由来すると考えられる遺伝子組換えセイヨウナタネ、遺伝子組換えダイズが生育していたが、組み換えられた遺伝子が交雑可能な近縁種へ拡大したり、生育範囲が拡大したりする状況を示していなかった。この結果、遺伝子組換えセイヨウナタネ、遺伝子組換えダイズが生物多様性に影響する恐れはないと考えられる。

農林水産省では、遺伝子組換え生物等の使用等の規制による生物の多様性の確保に関する法律に基づき承認した遺伝子組換えセイヨウナタネや遺伝子組換えダイズによる生物多様性への影響の有無を検証し、遺伝子組換え農作物によるわが国の生物多様性への懸念に対応するため、セイヨウナタネとその近縁種(カラシナ、在来ナタネ)については平成18年度から、ダイズとその近縁種であるツルマメについては平成21年度から、それぞれ遺伝子組換え体の生育や近縁種との交雑の有無について調査を実施している。

 

調査方法と調査結果のポイント

今回は、これまでの実態調査で遺伝子組換え体が多く生育していた港を調査することとし、ナタネ類については7港、ダイズとツルマメについては2港において、それぞれ陸揚げ地点から5kmの範囲で、遺伝子組換え体の生育を調査するため、葉を採取・分析し、遺伝子組換え体か否かを判定した。

さらに、遺伝子組換え体が交雑と世代交代を繰り返すことにより、組み換えられた遺伝子の交雑可能な近縁種への拡大の可能性を検証するため、遺伝子組換え体が生育していた場所とその周囲でナタネ類等の種子を採取・分析し、遺伝子組換え体の交雑率を推定した。

その結果、遺伝子組換えセイヨウナタネは、7港で計79群落(137個体)生育していたが、生育範囲が拡大する状況を示していなかった。

遺伝子組換えセイヨウナタネと、その周囲に生息するセイヨウナタネとの交雑率は、文献等に示された遺伝子組換えでないセイヨウナタネ同士の交雑率と同程度だった。このため、遺伝子組換えセイヨウナタネの交雑性は、遺伝子組換えでないセイヨウナタネと同程度であり、これまでの調査結果でも組み換えられた遺伝子が遺伝子組換えでないセイヨウナタネへ拡大する状況を示していなかった。

遺伝子組換えダイズは、1港において計3群落(3個体)生育していたが、生育範囲が経年的に拡大する状況を示しておらず、さらに遺伝子組換えダイズとツルマメの交雑体が生育していないことが確認された。

遺伝子組換えセイヨウナタネや遺伝子組換えダイズの生育地点は、主に陸揚げ地点に近接する幹線道路沿いの植栽帯等だった。

 

農林水産省の今後の対応

今回の調査結果は、平成29年度までと同様、組み換えられた遺伝子が交雑可能な近縁種に拡大したり、生育範囲を拡大したりする状況を示していない。そのため、遺伝子組換えセイヨウナタネと遺伝子組換えダイズが生物多様性に影響するおそれはないと考えられる。

農水省では、遺伝子組換えセイヨウナタネ、遺伝子組換えダイズによる生物多様性への影響の有無を検証するため、令和元年度以降もこの調査を継続して実施しており、遺伝子組換え農作物等がわが国の生物多様性に及ぼす影響に係る科学的知見の一層の充実を図っている。


株式会社官庁通信社
〒101-0041 東京都千代田区神田須田町2-13-14
--総務部--TEL 03-3251-5751 FAX 03-3251-5753
--編集部--TEL 03-3251-5755 FAX 03-3251-5754

Copyright 株式会社官庁通信社 All Rights Reserved.