国土交通省はこのほど、ASEANでの低環境負荷船の普及戦略(ASEANグリーンシップ戦略)の策定を目的に、マレーシア・クアラルンプールで初の実務者会合を開催。会合では、船舶に関する低環境負荷技術とその普及政策の紹介や、ASEANグリーンシップ戦略の骨子を検討し概ね合意した。今後、実務者会合を2回程開き、平成30年度中にASEANグリーンシップ戦略の原案を取りまとめる予定だ。
東アジア10ヵ国(ブルネイ、カンボジア、インドネシア、ラオス、マレーシア、ミャンマー、フィリピン、シンガポール、タイ、ベトナム)で構成するASEANは、近年、高い経済成長を遂げている。
27年のASEAN経済共同体の設立により、今後、域内の連結性が改善し、海上輸送量が増大することが見込まれる一方、船舶からのCO2排出量の増加等が懸念されている。
また、ASEANでは、老朽化した船が多く使われており、老朽化した船は燃費が悪く、運行に伴い多くのCO2を排出するが、これを低環境負荷船へ代替することや、適切なメンテナンスを行うこと等により、船舶からのCO2排出量を抑制することができる。
こうした背景から、ASEANは、27年にクアラルンプール交通戦略計画(KLTSP)を取りまとめた。同計画では、30年までに低環境負荷船の普及戦略(ASEANグリーンシップ戦略)を策定することが定められている。
この戦略では、ASEANでの内航海運や造船技術等の実情を踏まえ、低環境負荷船を効果的に普及させるための方策を取りまとめることとしている。
低環境負荷船の普及は、船舶の近代化にもつながるため、船舶の安全性向上への寄与も期待される。
一方、昨年11月に開催された第14回日ASEAN交通大臣会合で、この戦略の策定を我が国が支援するプロジェクト(低環境負荷船普及促進プロジェクト)が承認された。国交省としては、我が国造船業・舶用工業の高い技術力を活かし、実務者会合を開催して戦略の策定を支援することとしている。
第1回実務者会合の結果
実務者会合では、我が国から、ASEANにおける船舶の実態調査の結果や、船舶に関する低環境負荷技術とその普及政策を報告した。
一方、ASEAN各国からは、各国の内航海運の実態や、各国が既に取り組んでいる政策について報告が行われた。
報告された情報を踏まえ、低環境負荷船の普及方策について活発な議論が行われ、低環境負荷技術を導入するための費用負担が課題であることや、各国の取組状況をお互いに共有することの重要性が認識された。
第1回実務者会合の結果、ASEANグリーンシップ戦略骨子に概ね合意するとともに、第2回実務者会合を30年第1四半期に開催することに合意した。