農研機構中央農業研究センターは、北陸地域の主力品種であるコシヒカリより早く収穫できる水稲新品種「つきあかり」を開発した。この品種の出穂期は、育成地では早生であきたこまちと同程度。中生のコシヒカリよりも2週間早く収穫が可能となり、十分に作期分散を図ることができる。また、短稈で、倒伏抵抗性が強く、収穫時期がほぼ同じあきたこまちに比べて10%程度優れる多収である。炊飯米は、外観、うま味に優れ、極良食味。日本穀物検定協会の食味官能試験では、コシヒカリより高く評価されており、4時間保温後の試験でもコシヒカリより高く評価されている。
経営の大規模化の進展、求められる 移植・収穫時期の分散が可能な品種
近年、農業法人等の大規模化が進んでおり、そのため、移植時期・収穫時期を広く分散できる品種に対する要望が高まっている。また、多収で60kgあたり生産コストの低減が可能で、外食・中食需要も満たせる品種が求められていた。農研機構は、こうした状況に対応するため、コシヒカリより早生で収益性が高く、さらに炊飯米の外観が良い極良食味品種「つきあかり」を育成した。
ご飯の艶やかな外観から命名 様々な優れた特徴を持つ
この品種は、宮崎の在来品種「かばしこ」を母とし、極良食味品種「北陸200号(後の「みずほの輝き」)」を父としたF1に多収の「北陸208号」を交配して育成したもの。ご飯の外観が艶やかで輝くように見えることから「つきあかり」と命名された。
育成地の新潟県上越市での出穂期はコシヒカリより1週間早く、あきたこまちとほぼ同じ。成熟期も前者より2週間早く、後者とほぼ同じだ。
穂数はあきたこまちよりも少ないが、穂長は長く、草型は「偏穂重型」である。稈長はあきたこまちよりも短く、葉色もやや濃い。
耐倒伏性はやや強く、育成地での玄米収量はあきたこまちに比べて標肥栽培で9%程度、多肥栽培で8%程度の多収。千粒重はあきたこまちよりも2g大きくなる。
玄米外観品質はコシヒカリよりも優れるが、あきたこまちと同等かやや劣る。高温登熟性はやや強だが、腹白が出る場合がある。食味はコシヒカリと同等以上の評価を得ており、炊飯後4時間保温した場合でもコシヒカリと同等以上の評価である。
栽培適地は、あきたこまちの栽培が可能な東北中南部、北陸、関東以西。
中食・外食等広い用途での利用に期待
平成28年度から新潟県上越市で栽培の取り組みが始まっている。数年後には北陸地域を中心に数百ヘクタールの栽培が見込まれている。
また、ご飯の外観が艶やかで食味が良く、4時間保温後もコシヒカリと同等以上の評価が得られていることから、中食・外食をはじめとする様々な用途への利用が期待されている。