2023年7月5日 希少がんのオンライン治験開始 地方患者のアクセス改善へ がんセンター

国立がん研究センター中央病院は6月27日、オンラインを通じて希少がんの治験を行う新たな手法を発表した。これにより、地方在住の患者が治験に参加しやすくなったほか、患者登録スピードの加速による早期の治験完了、治験全体のコスト削減が期待されている。

これまで希少がんの治験を受けるためには、治療のタイミングごとに都市部の医療機関まで毎回来院する必要があった。新たに始まる「オンライン治験」では、参加者が近くの〝パートナー病院〟と呼ばれる医療機関を受診し、そこの医師と一緒にがんセンター中央病院の医師からオンラインで説明を受ける。治験薬は、がんセンター中央病院が患者の自宅へ直接郵送する。治験期間中の検査は決められたスケジュールの下、パートナー病院で受け、その結果をがん研究センター中央病院と共有していく。

なお、パートナー病院は、がんゲノム医療中核拠点病院・拠点病院・連携病院のいずれかである必要がある。両施設は、事前もしくは患者からの申し出を受けた際に、検査を委託・結果を共有するといった契約を締結する。パートナー病院は現在、国立病院機構四国がんセンターと島根大学医学部附属病院の2施設のみ。だが、今後はパートナー病院を全国へ拡大し、希少がんオンライン治験ネットワークを整備していく方針だという。

オンライン治験の対象となるのは、前腕部に多く発症がみられる「類上皮肉腫」というがん種の患者に、別のがんの治療薬であるタゼメトスタットを投与して、有効性を検証するもの。第一号のオンライン患者登録を、今年8月から開始する予定だ。

背景には、都市部の医療機関に治験が集中しているという実情がある。実際、今年3月末時点で、がんセンター中央病院での治験実施数は525。一方、同時期の地方の大学病院の実施数は一桁も珍しくない状態だった。

また、患者が遠隔地からがんセンター中央病院で行われている治験への参加を希望しても、移動の時間や経済的な負担によって断念するケースも多く、治験へのアクセス格差は大きな課題だった。

今回の取り組みについて、パートナー施設である四国がんセンターの青儀健二郎臨床研究推進部長は、「地方に居ながらにして、最新の治療薬に触れる可能性がありますので、是非利用していただきたいと思います。サポートさせていただきます」とコメント。島根大学医学部附属病院の田村研治腫瘍内科教授は、「今回、DCT(※ Decentralized Clinical Trial=オンライン治験)に協力施設として参画できること、大変うれしく思います。これまで、地方のがん患者、とりわけ、希少がん患者が、東京など都心に行くすべがなく、治験に参加することをあきらめていた方がおられます。DCTの取り組みによって、そのようながん患者さんに、治療の機会が与えられればと思います。今回の取り組みは、今後の、新しい抗がん剤開発のモデルになると思います」と語った。そのほか当事者である日本希少がん患者会ネットワークの眞島喜幸理事長は、「治験施設が身近にないため、参加したくてもできない希少がん患者が全国に大勢います。DCTネットワークの構築を通して実現されるオンライン治験は希少がん患者の希望の光です。DCTネットワークの一日も早い実現に期待しています」と今後への期待を述べている。


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