2023年12月15日 居宅介護支援の変革 介護報酬改定で実施されるケアマネの処遇改善策【田中紘太】

来年度の介護報酬改定では、居宅介護支援に大きな変革がもたらされるでしょう。

今月6日の国の審議会(社会保障審議会・介護給付費分科会)で、居宅介護支援をめぐり7つの論点が提示されました。その中で特に大きなポイントは、他のサービス事業所との連携によるモニタリング(オンラインモニタリング)の導入と、ケアマネジャー1人あたりの取り扱い件数の見直しだと考えます。

まず、今回の改正で抑えておくべき重要な視点は〝人材確保〟です。審議会の資料にも、

◯ ケアマネジャーの人材不足が非常に厳しい状況にある。全国的にケアマネジャーの育成確保、処遇改善、経営の安定を図らなければならない。

◯ ケアマネジャー、主任ケアマネジャーの人材確保が更に困難になっている。処遇改善加算の対象とするか基本報酬などの評価により、環境の改善が必要。

‐などと記載されています。ただ、居宅介護支援にも処遇改善加算を導入する案は今のところ俎上に載っていません。

一方、介護職員については、政府が来年2月から新たに1人あたり6000円の賃上げを実施すると打ち出しました。現在も、例えば介護福祉士がケアマネジャーになると、処遇改善加算がつかなくなって給与が下がることもあります。こうした状況が人材不足に拍車をかけているとの指摘があり、これから状況が更に悪化してしまうことは避けなければいけません。

居宅介護支援の処遇改善加算の創設は、財源確保をはじめ様々な高いハードルがあるのでしょう。とはいえ、ケアマネジャーの人材不足は足元の喫緊の課題です。地域によっては居宅介護支援事業所、ケアマネジャーがなかなか見つからず、介護サービスの利用開始が大幅に遅れてしまうケースも出てきています。

処遇改善加算の創設が難しい場合でも、ケアマネジャーの賃上げ、人材不足の解消に向けて打てる施策はないか − 。

そこで立案されたのが、ケアマネジャー1人あたりの担当件数を増やす逓減制の緩和でしょう。2021年度の介護報酬改定から始まり、今回もその拡大が提案されています。厚労省は今月6日の審議会で、国のケアプランデータ連携システムの活用などを新たに要件として加えたうえで、減算の適用を50件からとする案を示しました。

もっとも、この取り組みを実際に進めている事業所はまだ多くありません。国の調査によると、昨年9月サービス提供分で逓減制の緩和を届け出ているところは全体の16.3%。このうち実際に適用されているのは5割強、つまり全体の8%程度に過ぎないと報告されています。

今回の介護報酬改定で逓減制が更に緩和されたとしても、現在の業務負担のままでは取り組みが広がっていかないと予想されます。そこで、業務負担の軽減に向けてオンラインモニタリングが提案されました。これまでの議論のプロセスで、関係団体からこうした施策を実現するよう求める声があがっていた経緯もあります。

厚労省は審議会で、引き続き訪問・対面でのモニタリングを原則にすると説明しています。そのうえで、一定の要件を満たす場合にオンラインモニタリングを認める意向を示しました。この場合、訪問・対面でのモニタリングの頻度は2ヵ月に1回に減ります。移動時間などの短縮が見込まれ、ケアマネジャーの業務負担が軽減されることは明白でしょう。

オンラインモニタリングなどを活用し、1人あたりの担当件数を適切に49件まで増やすことができれば、事業所の収入は増加します。ケアマネジャーの給与も上がるでしょう。これが、厚労省が想定しているケアマネジャーの処遇改善策の柱です。

また、オンラインモニタリングは業務時間を短縮する一定の効果も見込まれます。このため、給与以外の面で待遇改善が進む可能性もあるでしょう。

とはいえ、ケアマネジャーや事業者の目線だけで考えを進めてはいけません。大前提として、ご利用者様が不利益を被らないようにすることが極めて重要です。我々には今後も、ケアマネジメントの質を決して落とすことなく、できるだけ良い支援を提供できるよう努力し続ける姿勢が求められます。

来年4月からは、法定研修のカリキュラムに「適切なケアマネジメント手法」が本格的に導入されます。それに伴い「課題分析標準項目」が見直され、「ケアプラン点検マニュアル」なども改正されます。ケアマネジメントの質を高めていくために、まずは「適切なケアマネジメント手法」をしっかりと習得していくことが非常に重要となるでしょう。


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