水産庁は10月1日、瀬戸内海をモデル海域として船舶自動識別装置(AIS)と同等の機能を有するスマートフォンのAISアプリを利用した衝突防止のための実証試験を開始した。
海難事故全体の中で20トン未満の小型船舶の事故隻数は約8割を占めており、このうち漁船はプレジャーボートに次ぐ隻数となっている。漁船の海難事故の原因は、衝突や転覆が上位を占めており、こうした海難事故を防止するためにはAISが有効。しかし、無線設備の搭載が困難な船外機船等の小型沿岸漁船には、AIS機器の搭載は現実的ではない。このため、AISと同等の機能を持つスマートフォンアプリの活用が期待される。
今回の実証試験では、小型漁船の衝突事故等の効果的な防止のため、AISと同等の機能を持つスマートフォンアプリを用いた衝突回避用アラートシステムを小型漁船に実装し、効果の検証を行うとしている。
AISアプリは、スマートフォンのGPS機能をもとにした自船位置や、システムで収集された周辺のAIS搭載船舶の位置情報を表示する。また、船舶同士の衝突危険性を検知し、画面表示や音により警報通知を行う。さらに、風向風速、気温、気圧といった気象海象情報、地震、津波情報を提供する。
期間は10月1日から来年1月10日まで。AISアプリの開発メーカーである日本無線(株)への委託で実施される。
実証試験には、手持ちのスマートフォンにアプリをインストールすることで参加可能。多くの漁業者が試験に参加することで実証の精度が向上し、より現場での実用化が進むことが期待される。