ベトナム国内における建設廃棄物の適正管理のための調査と技術開発を共同で実施している国立環境研究所、埼玉大学、ハノイ建設大学、資源環境戦略研究所(ベトナム)の研究者らは、ベトナムのハノイにおいて、建設廃棄物をリサイクルする定置型プラントの実現性が極めて高いことを明らかにした。
また、社会経済的な価値を考慮すれば、移動式リサイクルプラントの導入も実現可能性があることを示した。建設廃棄物のリサイクルが成立するための経済的な条件が示されたことは、ベトナム国内で高い関心を呼んでいる。
今回の研究は、科学技術振興機構及び国際協力機構が支援する地球規模課題対応国際科学技術協力プログラムの枠組みの一環として、建設廃棄物のリサイクル事業の定着に向けた調査及び評価を実施したもの。
建設廃棄物のリサイクルは、埋立処分・不法投棄の削減、天然資源の保全や建設業の持続可能性の確保に向けて重要な事業だが、ベトナムでは今なお、リサイクル技術やリサイクル製品の流通、品質確保などに関連した環境が未整備で、リサイクル事業が成立するための条件が限定的な状況にある。
日本・ベトナムの共同研究グループは、ベトナム・ハノイにおける建設廃棄物のリサイクル事業の実現可能性について経済的な評価を行い、さらなるリサイクルの導入と推進について日本の経験も踏まえた提案を行った。
再利用10%、再資源化ほぼゼロ
1980年代の日本と同じく、現在のベトナムでは急激な都市化の影響で建設廃棄物発生量が増加している。特に、ハノイでは建設廃棄物処理の容量を大きく超えているため、不適正な管理・不法投棄が横行し、早急な対策が必要な状況にある。建設廃棄物のリサイクルを拡大することが解決への近道と考えられるが、現状では再利用の割合が10%、再資源化はほぼゼロ。公的なリサイクル事業及び認可されたリサイクル事業者も存在していない。リサイクル事業の推進のためには、行政機関、民間事業者、および投資家に対して、事業の可能性について十分な理解が得ることが必要だと考えられる。
情報提供の一助として、研究チームは、リサイクルの原料となる廃棄物の調達やリサイクル製品の利用先など、ハノイにおける実際の状況を考慮したうえで、建設廃棄物リサイクル事業の社会経済的な実現可能性を評価した。ハノイ市で排出される最も主要な建設廃棄物であるコンクリートがらを対象として、再生骨材を製造するプロセスを事例に建設廃棄物リサイクル事業の財務的な指標に加え、処分量の削減や温室効果ガス排出などの外部的な影響についても加味した経済的な収益性を評価することで、事業の社会環境的な実現可能性に関する予測を行った。
民間のリサイクル事業においては財務的な面が最も重要であり、環境配慮に関する効果が社会的責任としてビジネスに取り入れられるのはベトナムではもう少し先の話で、建設リサイクルを推進していくためには、各種の政策的な支援が必要であることが示唆された。具体的には、日本での成功事例や諸外国の教訓を踏まえ不法投棄に対する罰則の強化、グリーン調達法の制定と公共工事でのリサイクル資材利用の義務付け、リサイクル建材の品質基準の策定などを提言した。
成果はすでにベトナム国内で大きな関心を呼んでおり、建設廃棄物の適正管理のためには地域の特性に合ったリサイクルの推進が必要である、というメッセージがニュースレターに掲載された。