この春施行されたこどもための法律である「子ども基本法」。日本財団が10歳から18歳までの〝こども〟1万人を対象に行った調査によると、当事者である〝こども〟の6割以上が認知していないという。知っていると答えたこども約4割のなかでも、内容までわかっているのは8.8%と1割未満。「詳しく知っている」と答えたのはわずか1.4%と100人に1人という結果となった。
今年4月にこども家庭庁が設置されるとともに、子ども基本法が施行された。子ども基本法は、こどもの権利条約に則り、全てのこどもの基本的人権が守られることや、差別を受けないこと、さらにこどもの意見が尊重されること、こどもが多様な社会的活動に参画する機会を確保することなどが規定されている。
海外では、こども施策を決定するにあたり、当事者であるこどもたちに調査し、こども自身の声を聴くことが多い。例えばイギリスでは2021年にこども50万人を対象とした調査を実施し、EUでもこどもの権利戦略と「こども保障」を策定する際に、1万人以上のこどもを対象とした調査を行っている。
わが国でも、今年秋にこども大綱が決定する予定で、こども家庭庁でもこどもの声を政策に反映させる取組を開始。こうした現状を踏まえて、日本財団でも、インターネットによりこども自身の意識を調査することとした。
権利条約は6割が「聞いたことない」
調査によると、子ども基本法について、こどもの61.5%が「聞いたことがない」と回答した。一方で、基本法を「聞いたことがある」としたのは29.8%で、「知っている」としたのは7.3%。詳しく知っていると答えたのは1.4%とわずかだった。
ユネスコが1989年に定めた世界中全てのこどもたちが持つ権利を定めた条約である「こどもの権利条約」についても理解度を確かめた。名称認知度は合計40.7%で、内訳は「聞いたことがある」30.9%、「知っている」8.1%、「くわしく知っている」1.7%。一方で、59.3%と6割近くが「聞いたことがない」と回答した。
こどもの権利条約では、こどもは①どんな理由でも差別されない、②命が守られ、成長できる、③自分に関することについて自由に意見を言うことができ、大人はそれを尊重する、④教育を受ける権利がある‐などと謳っている。条約を「くわしく知っている」「知っている」「聞いたことがある」と回答したこどもの全項目の認知状況は、少なくとも「聞いたことがある」が80%以上、「くわしく知っている」もしくは「知っている」35%以上だった。
このうち最も認知されていた項目は「こどもは教育を受ける権利がある」で、94.7%が少なくとも「聞いたことがある」と答えた。「くわしく知っている」もしくは「知っている」は61.6%。
逆に最も認知度が低かったのは、「子どもに関することについて、大人はそのこどもにとって最も良いことを優先する」。少なくとも「聞いたことがある」としたのは80.5%、「くわしく知っている」または「知っている」との回答率は36.5%となった。
周囲のこどもで、こどもの権利が守られていないと感じているのは、「こどもは自分に関することについて、自由に意見を言うことができ、大人はそれを尊重する」と「こどもはどんな理由でも差別されない」が11%超の回答率で最多。差別を受けた経験としては「外見や見た目」「成績」をあげる声が最も多かった。
求めるのは「大学までの教育費無償化」
さらに、調査では、国や社会がこどもたちのために優先的に取り組むべき事項を尋ねた。最も多かったのは「高校・大学までの教育を無料で受けられること」で、40.3%が回答。さらに「いじめのない社会をつくること」「こどもが犯罪や悪いことに巻き込まれることなく、安全に過ごせること」などが3割を超えた。