2021年11月16日 子どもの8人に一人が「CSHCN」 親もストレス受けやすいが、社会支援で軽減

一般的な子どもが必要とする水準以上の保健・医療サービスを必要とする子ども(CSHCN)が、日本国内に約12.5%存在することが、東京大学研究グループの調査分析により明らかとなった。こうした子どもを持つ親は不安・抑うつを抱えやすいが、そのストレスはソーシャルサポートによって軽減される可能性があるという。CSHCNには医療的ケア児も含まれる。この調査結果は、偏りの少ない一般住民を対象としたコホート研究から存在率を示した研究や、親の精神保健問題との関連やソーシャルサポートの媒介の可能性を示した研究としては初の成果。医療的ケア児と親の介護負担の問題がクローズアップされ、「医療的ケア児支援法」が、今年成立した。研究グループでは、「長期にわたって医療を必要とする子どもたち自身や家族の介護負担に対する支援の拡充の必要性が望まれる」としている。

この調査は笠井清登東大大学院医学系研究科精神医学分野/医学部附属病院 精神神経科教授らにより行われた。思春期での精神機能の発達を包括的に研究することを目的とした、大規模コホート調査である東京ティーンコホート(TTC)の第一期調査を用いた横断研究。4003世帯が調査に回答した。

 

CSHCN割合、増加の一途に

医療の進歩や予防接種体制の改善に伴い、以前では小児期に死亡していた患者が長期生存できる時代となった一方で、慢性疾患を抱える子どもの医療施策と、子どもたちをケアする親の負担への支援が問題となっている。

米国では歴史的に、慢性的な疾患に罹患する子どもの特定に単に診断名を用いてきたが、時代を経て小児慢性疾患の疾病構造が変わったことで、重症度や疾患による生活への影響度を加味しない、従来の診断名のみによる評価では、適切に福祉を必要とする子どもを把握することや支援施策を策定することが困難となっている。

そこでより広範囲で包括的な概念が必要とされるようになり、米国母子保健局は、1997年に「身体的、発達的、行動的、感情的に慢性的な問題を抱え、一般的な子どもが要する以上の健康および関連サービスを必要とする、もしくはそのリスクがある子ども」としてCSHCNを定義した。

CSHCNの国勢調査も行われるようになり、CSHCNの割合は、米国の17歳までの小児の12.8%(2001年調査)、13.9%(2005/2006)、14.1%(2009/2010)、18.8%(2016/2017)に存在するとされ、増加の一途をたどっている。

また、CSHCNの家族の調査も行われるようになり、治療費やその他経済的負担、治療にかかる時間、養育者の就労が制限されるなどの面で家族に負担を与えることが分かっている。

しかし、CSHCNの養育者の精神的健康については米国のCSHCN国勢調査の項目に入っておらず、養育者がその他の養育者と比べてどの程度不安・抑うつなどのストレスを抱えているのかは不明で、CSHCNを養育することと抑うつの関係を媒介する要因もわかっていなかった。

わが国でも、難病あるいは小児慢性疾患への医療費支援は、主に児童福祉法による小児慢性特定疾患治療研究事業と自治体による子ども医療費補助制度として行われており、子どもの生命的予後の改善に大きく寄与してきた。

一方で、成人に移行するまでも、また移行してからも、長期間さまざまな障害や合併症を持ち、治療や支援を必要としているものの、縦割り型の支援策で小児慢性疾患児を支援することに困難が生じていた。また、経済的支援以外に小児慢性疾患児の養育者、家族をサポートする行政的施策もなかった。

研究は、日本でも一般の子どものなかにCSHCNが8人に1人という高い率で存在すること、CSHCNを養育することは、高いストレス状態と関連すること、さらにその関連が社会的支援により緩和されうることを示したことで、今後の政策に向けて重要なエビデンスを提供したといえる。


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