長崎大学の研究グループは、長崎県依存症予防教育啓発事業の委託を受け、新型コロナウイルス感染による全国一斉臨時休校後の小学生・中学生・高校生のゲーム依存症の実地調査を行った。調査の成果、調査に参加した児童・生徒のうち7%にゲーム依存症の可能性があることを確認。ゲーム依存症の子どもはゲームに費やす時間と金額が多いだけでなく、不登校や情緒や行動の問題、インターネット依存等のさまざまな問題点もみられることもわかった。
さらに、ゲーム依存傾向のある子どもは新型コロナウイルスに対する不安を強く感じる傾向があり、新型コロナウイルス流行後にゲームのプレイ時間やゲームに費やす金額が増えていることも判明。新型コロナウイルスの大流行が子どもの心理状態に悪影響を及ぼし、ゲーム依存症に悪影響を与えた可能性が示唆された。未だ終わりの見えないコロナ禍で、ゲーム依存症の子ども達に対する特別なサポートの必要性があらためて浮き彫りとなった。
この調査を行ったのは、長崎大病院地域連携児童思春期精神医学診療部の山本直毅助手、長崎大生命医科学域精神神経科学の森本芳郎講師、同作業療法学の今村明教授らの同大ゲーム・ギャンブル等依存症研究会の研究チーム。調査結果は、精神医学専門誌「Psychiatry and Clinical Neurosciences Reports」に掲載された。
WHOも「ゲーム依存症」を危惧
ここ数年、スマートフォンやモバイルPCが一般化したことで、ゲーム依存症の子どもが増加していることが世界的な問題となっている。今年1月に世界保健機関(WHO)が発行した国際疾病分類の最新版(ICD‐11)で、ゲーム依存症が正式な精神疾患として採用されたことはメディア等でも大きな注目を集めた。
しかしながら、日本国内でのゲーム依存症に関する研究はほとんどなく、有病率や社会機能障害などの実情はよくわかっていない。現在、新型コロナウイルスの世界的流行は完全収束する気配がなく、人々の日常生活はさまざまな制限を受けている。このコロナ禍でのストレスが、アルコール依存症やギャンブル依存症などのさまざまな依存症を悪化させることが次第に明らかとなってきており、ゲーム依存症に関しても悪影響があるのではないかと危惧されている。
不登校や情緒問題なども抱える
こうした問題意識の下で、長崎大研究グループは、新型コロナウイルスによる全国一斉臨時休校後のゲーム依存症の実地調査を実施。調査の結果、長崎県内に在籍している小学生・中学生・高校生4048名のうち、7%の児童・生徒(小学生:7.3%、 中学生:7.5%、高校生:6.1%)がゲーム依存症に該当する可能性があることがわかった。
また、これらのゲーム依存傾向のある子どもは、単にゲームに費やす時間と金額が多いだけでなく、不登校、情緒や行動の問題、インターネット依存等のさまざまな問題点を抱えていることが明らかになった。
さらに、ゲーム依存傾向のある子どもは新型コロナウイルスに対する不安を強く感じる傾向があり、新型コロナウイルス流行後に、ゲームのプレイ時間やゲームに費やす金額が増えていることも判明した。
今回の研究成果は、ゲーム依存症の子ども達はさまざまな心理的・社会的な問題点を抱えており、新型コロナウイルスに対する不安を強く感じていることを示唆している。これらの結果は、未だ終わりの見えないコロナ禍で、ゲーム依存症の子ども達に対する特別なサポートの必要性を浮き彫りにしている。長崎大ゲーム・ギャンブル等依存症研究会は、ゲーム依存症の子ども達に対する効果的なサポート方法を開発・提供していくため、今後も研究を続ける方針だ。