夏休み期間を利用して海外へ留学する大学生数は10年連続で増加し、今年はここ10年で過去最多となることが、民間留学関連企業の調査で明らかとなった。一方、不透明な就職採用スケジュールにより、3年生の留学が減少し、さらに、多くの学生が長期留学に二の足を踏んでいるという。〝内向き志向〟と揶揄される今の大学生を海外へ向かわせるには、経済的な支援だけでなく、安心して留学することができる環境づくりが不可欠であることがあらためて浮き彫りとなった。
この調査結果を発表したのは、雑誌「留学ジャーナル」発行元であり、わが国最大級の留学エージェントでもある(株)留学ジャーナル(本社:東京・信濃町)。今夏短期留学申込動向と留学予定の大学生を対象とした留学意識調査を実施し、「2016年夏休み留学動向」としてまとめた。
□大学生の夏休み留学予定者、過去10年で最多
今年5月末時点での夏の留学(8週間以内の留学で7~9月に出発)への申込者は、10年連続で増加し、過去10年で最多数となった。官民協働で進められている留学促進プログラム(トビタテ!留学ジャパン)や、留学支援に力を入れる大学の増加に伴い、留学が身近なものになりつつあることがひとつの要因。一方で、期間や留学先の学校など、より自由に選択できる留学のニーズが拡大したことも、大学生の留学を促しているとみられる。
□夏休みの留学、主流は「2年次の4週間」
全体では前年減少した4週間の留学申込者数が、今回は20%増加し、1ヵ月間の留学が人気を集めている。学年別では、1年生と2年生の伸びが大きく、特に2年生は「4週間の留学」に関しては前年比57ポイント増と大幅アップ。夏休みを好きに使える1・2年次に海外で経験を積もうとする学生が増えていることが明らかとなった。
一方、3年生については、4週間の留学は前年比で23ポイント減少し、1週間~3週間が増加するなど、留学の短期化がみられた。学年別期間別では、大学2年次4週間の留学が、大学生の夏の留学の主流となっているといえる。
学年が上がるにつれ、インターンシップや資格取得に向けた勉強など、その時期に合わせた活動への参加を余儀なくされるため、留学のためのまとまった時間が取れない大学生の実状があらためて浮き彫りとなった。
□友人などの留学に影響
留学を検討するにあたり影響を受けたと感じることとしては、「友人や家族など知り合いの留学」が68%で最多。3年連続で上昇している。文科省の『トビタテ留学ジャパン』が学内でも浸透するなか、自身の周りでも留学する友人が増え、年々留学が身近なものとなっていることがうかがえる。続いて、「自身の海外旅行体験」(34%)、「企業のグローバル化の進展」(27%)などが続いた。
□留学後のキャリア館、海外勤務に対して男女間で意欲に差
「今回の留学が、今後のキャリアに役立つと思いますか?」という問いに対しては、全体の92%が肯定的な回答を行った。また、将来海外での勤務を希望するか聞いたところ、男性の71%が前向きに答えた。一方、女性で「そう思う」「ややそう思う」と答えたのは57%に止まり、男性の方が海外勤務に対して意欲的であるという結果が得られた。
□気になるのは企業の採用スケジュール
長期留学をする上で、就職活動で気になることに関する問いに対しては、昨年は「留学経験の評価の有無」との回答とともに、留学することで、就職活動の情報不足になることを心配するという答えが寄せられた。今年は「情報不足」になることへの不安や留学経験の評価を気にする声がある一方、企業の採用スケジュールが明確でないことへの懸念が多くの学生から聞かれた。
昨年と比べ15ポイントも上昇しており、経団連が毎年発表している企業の採用スケジュールの変更に伴い、就職時期の明確な時期が定まらないことが、学生が長期留学を躊躇する要因となっていると推測される。