2020年10月5日 外出自粛で社会的時差ボケが改善 早稲田大教授がコロナ禍の生活リズム調査

新型コロナウイルス感染症の拡大防止のため、外出の自粛が要請されてきたが、早稲田大学教授が民間企業と行った調査研究でコロナ禍の外出自粛により、生活リズムに変化が生じていることが明らかとなった。若者は平日も夜型化し、平日と休日の生活リズムの差(社会的時差ボケ)が大きく解決したという。また、外出自粛中の体重変化と生活リズムの関係を調べたところ、平日・休日に関わらず、睡眠時間が朝型化(早寝・早起き)した人は痩せ、夜型化(遅寝、遅起き)した人は太ったことがわかった。朝型化でダイエットに成功という結果は、時間栄養学的に新しいエビデンスとなった。

この調査を行ったのは、早稲田大理工学術院の柴田重信教授と田原 優准教授。食事管理アプリサービス「あすけん」を展開するaskenの協力を得て、同アプリ利用者に対してアンケートを行い、約3万人から回答を得た。調査結果は次のとおり。

□調査結果① 「若者の夜型化と生活リズム改善」

特に10代から30代の若者で、平日の寝る時間、起きる時間が遅くなり、生活リズムが夜型化した。一方で、休日は生活リズムに変化はみられなかった。この結果、これまで問題視されていた平日と休日の生活リズムの差(社会的時差ボケ)が大きく解消されていることが分かった。特に10代の若者では、外出自粛前に平均して1時間あった平日・休日の差が、平均20分まで短縮した。また、睡眠時間も平日に全年齢で増加した。

一方で、睡眠の質が改善したと答えた人は全体の2割程度で、外出自粛による生活リズム改善が睡眠の質の改善には結びついていないことが分かった。これらの結果は、外出自粛による精神的な苦痛やストレスが影響しているものと考えられる。

□調査結果② 「朝型シフトでダイエット成功」

「あすけん」アプリ利用者の多くはダイエットを目的として利用している。そこで外出自粛中の体重変化と生活リズムの関係を調べたところ、外出自粛により平日・休日に関わらず、睡眠時刻が朝型化(早寝、早起き)した人が痩せ、夜型化(遅寝、遅起き)した人が太ったことが明らかになった。また、太った人は痩せた人に比べ、外出自粛中に活動量が低下し、ダイエットに挑戦しなかったと答えた人が多く、間食も増え、さらに睡眠の質も低下したと回答していた。

睡眠不足や社会的時差ボケは、肥満の要因。しかし今回の研究成果は、睡眠の長さや社会的時差ボケと体重変化の相関はみられず、体重が増加した人も減った人も睡眠時間が増加し、社会的時差ボケが減少していた。従って、睡眠不足や社会的時差ボケの解消というよりも、朝型―夜型の変化、それに伴う活動量、間食、睡眠の質の変化が、短期間の体重変化に繋がったと考えた。一方で年齢による差は特になかった。

 

貴重な社会実験データ

社会的時差ボケは、特に夜型の若者で週末に夜更かしをし、朝寝坊することで起こりやすく、学校の成績や肥満、免疫機能低下等に影響することが、これまでの調査研究で明らかになっていた。ここ数年、学校の始業時間を遅らせることで、子どもの睡眠、生活の質などが改善する報告が相次いでいる。今回の外出自粛は、通学や通勤といった学校や仕事に関する社会的制約の減少で、若者の生活リズムが改善した貴重な社会実験データとも考えられる。

また、遅い夕食や夕食中心の生活が肥満に繋がることが多数報告されているが、生活リズムの変化が実際にダイエットにどう影響するかは明らかになっていなかった。今回の調査結果は、コロナ禍の外出自粛という生活を見直す機会を経て、体内時計とダイエットとの相関関係について国民規模で明らかになった貴重な事例となった。


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