2019年6月27日 地域資源の保全活動の地域経済波及効果を評価 ウェブツールで簡便に、農研機構が開発

農研機構は、多面的機能支払交付金を活用した地域資源の保全管理などの共同活動について、その活動による地域経済への波及効果を評価できるウェブツールを開発した。

現在、全国1429市町村(2017年度時点)で、農業者や地域住民が農用地、水路、農道などの地域資源を保全管理する共同活動が「多面的機能支払交付金」を活用して実施されている。この活動には、国土や生態系の保全など農業・農村の有する多面的機能の維持・発揮のみならず、実施市町村や周辺地域の地域経済活性化に寄与することが期待されている。しかし、その経済波及効果を定量的に明らかにするためには、経済分析に関する専門的知識が必要であり、従来はほとんど行われてこなかった。

今回農研機構が開発したのは、活動に関わる行政機関や土地改良区等の実務者が簡便に活動の経済波及効果をブラウザ上で評価できるアプリケーション。ユーザーは、対話形式により活動に要した経費の品目ごとの支出額と活動地域を入力するだけで、専門的な分析手法(産業連関分析)に基づく波及効果を求めることができる。計算結果は、その活動を行う市町村、同じ都道府県内の他市町村、他の都道府県に分かれて出力される。

このツールについては、多面的機能支払交付金による活動の地域経済活性化への貢献度合いをわかりやすく示すこと(見える化)で、行政機関や関係団体が活動を促進するための施策の評価に役立つと期待されている。

 

〔農業者と地域住民協働で行われている地域資源の保全管理活動〕

農業者と地域住民が協働して、農用地や水路、農道などの地域資源の保全管理を行う活動が、全国1429市町村で行われている。この活動は、「農業の有する多面的機能の発揮の促進に関する法律」に基づき、「多面的機能支払交付金」を活用して実施されている。

この交付金は、農業・農村の有する多面的機能の維持・発揮を図るための地域の共同活動に係る支援を行い、地域資源の適切な保全管理を推進するもの。農用地、水路、農道などの保全活動のほか、生態系や景観の保全など農村環境の保全活動も対象となる。農業者や地域住民で構成される活動組織等を交付対象としている。

こうした交付金支出の社会的な意義を地域住民だけでなく広く国民全体に示すためには、この活動に要する経費が実施市町村の経済活性化にどの程度貢献するのかを明らかにすることが重要である。

一般に、活動に要する経費の支出は、お金の流れとともに活動地域内外に波及するが、その波及効果を定量化するためには、経済分析(産業連関分析)に関する専門的知識が求められる。このため、従来はほとんど行われてこなかった。

農研機構はこうした状況を受け、今回、活動のための資金を提供する行政機関やともに活動を行う土地改良区等の実務者が、簡便に多面的機能支払交付金による活動の経済波及効果をブラウザ上で評価できるアプリケーションを開発し、ウェブサイトに公開した。

 

〔開発されたツールの特徴・強み〕

今回開発されたのは、行政機関や土地改良区などが、多面的機能支払交付金を活用して農業水利施設等を保全する地域の共同活動の経費支出が、地域経済に波及する効果を評価・分析するウェブツールで、広く専門家に認められた分析手法に基づいた分析結果を提供する。

使い方としては、まず、ウェブサイトから「多面的機能支払交付金経済評価ツール」を選択する。次に対話形式により活動を行う地域を指定し、使途別の支出額を入力する。これにより計算が実行できる。

産業連関モデルの計算は自動的に行われるため、産業連関分析の専門知識がなくても使うことができる。計算は、アプリケーションに組み込まれた都道府県間産業連関表と市町村民所得額のデータに基づき、産業連関モデルと地域シェア法を用いて行われる。

経済波及効果は、活動を行う市町村、同じ都道府県内の他市町村、他の都道府県に分かれて出力される。

 

〔行政機関等が活動を促進するための施策評価への貢献に期待〕

多面的機能支払交付金による地域資源の保全活動は、国土や生態系の保全など、農業・農村の有する多面的機能の維持・発揮等を目的としているが、それに加えて活動による経費の支出が、実施市町村だけでなく、周辺の地域に波及して地域経済の活性化に貢献する効果を示すことで、活動に対する国民の理解が進み、施策のアカウンタビリティを高めることができる。

今回開発されたツールについては、多面的機能支払交付金による活動の地域経済活性化への貢献度合いをわかりやすく示すこと(見える化)で、行政機関や関係団体が活動を促進するための施策評価に役立てられると期待されている。


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