在宅医療を担う医療機関は、新型コロナウイルスの対応で1施設あたり月に48万円を支出していることが、関係学会の調査で明らかになった。8割以上の施設が個人防御具などの不足を訴えており、今後の第2波以降に向けては、感染防止に向けた資材の確保が必要だとしている。
調査は先月初旬、学会所属の2443人の医師を対象にオンラインで実施。全体の12.9%にあたる316人から有効な回答を得た。これらの医師が所属する316施設が対応している患者数は5万3401人(居宅:3万470人、施設:2万2931人)で、概ね全国の在宅患者の1割に相当する。今年2月から5月までの4ヵ月間に、新型コロナウイルスへどう対応してきたのかを尋ねた。
それによると、316施設で感染の予防や制御に向けて生じた金額は、1ヵ月で1億5110万円になった。内訳をみると、感染防御具や抗体検査等保険収載されていない検査材料の購入などの材料費が6286万円、時間外勤務手当や危険手当、勤務停止時の手当、新規雇用などの人件費が4707万円、増改築工事や院内簡易工事などに生じた設備費が2139万円、情報通信機器購入や在宅勤務や遠隔医療のためのサービスの導入費が1978万円となる。
■ 16%の施設ではスタッフに感染や濃厚接触発生
さらに、16.2%にあたる51施設では、医師や職員の感染や感染疑い、濃厚接触が発生。このうち8施設では診療の一部停止、4施設では一時全面停止を余儀なくされるなど、運営に大きな支障が出ている。19%にあたる54施設では、風評被害や職員の社会生活上の不利益が起こっていた。45施設では経営上の損失が生じ、28施設では職員の出勤に支障が生じている。
また、82.5%にあたる260施設では、個人防御具が不足していたことがわかった。複数回答でどの資材が不足していたか質問したところ、最も多かったのはガウンの85.1%(229施設)。次いで、消毒用エタノールの66.2%(178施設)、N95(KN95)マスクの65.4%(176施設)という答えが多かった。全体の傾向としては、ガウンやマスク、フェイスガードなど、日常診療での使用頻度の低い資材の不足が深刻だった。資材の種類によっては供給状況が改善しつつあるが、流通ロットの非常に大きいものが多く、小規模医療機関の多い在宅医療においては事業所単位での資材調達で困難な状況が続いているとしている。