(国研)森林研究・整備機構森林総合研究所は、国産の白トリュフであるホンセイヨウショウロを人工的に発生させることに成功した。これは、国内では初となるトリュフの人工的発生になる。今後、栽培技術を確立することで、ホンセイヨウショウロが新たな食材として安定供給されるとともに、その風味を活かした加工品の開発など、新たな産業の創出につながることが期待される。
日本にも20種以上のトリュフが自生
トリュフは西洋料理に欠かせない高級食材となるきのこで、その芳醇な香りを楽しむ。イタリア、スペイン、フランスなどが有名な産地だが、近年、わが国でも食文化の多様化を受けて、トリュフの香りを楽しむ機会が増えている。
国内で流通するトリュフは、全て海外からの輸入によるもの。産地によって価格は異なるが、欧州産はキログラム当たり約8万円(2020年度財務省貿易統計)で輸入されており、きのこの中で最も高額で取引されている。
日本国内でも20種以上のトリュフが自生し、その中には食材として期待できる種もあったが、野生のトリュフは希少で人工栽培技術は確立されていなかった。こうした中、森林総合研究所を中核機関とした研究グループが国産トリュフの栽培化を目指し、平成27年度に研究プロジェクトを開始した。
国産種のトリュフ発生を目指して
トリュフは、生きた樹木の根に共生して増殖する菌根菌と呼ばれる菌類に属しており、人工的にこれらの子実体を発生させるには、樹木との共生関係を明らかにして、それを再現することが重要となる。海外では、樹木の根にトリュフ菌を共生させた苗木を植栽することで、トリュフの栽培が行われてきている。
そこで研究グループは、国内のトリュフの自然発生地で調査を進め、トリュフの生育に適した樹種や土壌環境を解明し、それらの条件を再現して国産種のトリュフを発生させることを目指した。
茨城県、京都府の試験地で子実体発生を確認
研究では、食材として有望な国産白トリュフであるホンセイヨウショウロを共生させたコナラ苗木を、国内各地の4つの試験地に植えて栽培管理を行った。その結果、茨城県内の試験地(平成29年10月植栽)、京都府内の試験地(令和元年4月植栽)にて、令和4年11月に、それぞれ8個、14個の子実体発生が確認された。また、これら子実体の形態や遺伝情報に基づき、ホンセイヨウショウロであることが確認された。
新たな食材としての価値に大きな期待
国産の白トリュフであるホンセイヨウショウロは、大きさは10cm以上にもなる場合もある。欧米の白トリュフと同様の香りがすることから、新たな食材としての価値が期待される。さらに、このトリュフの栽培技術が確立されれば、国産トリュフが新たな季節の食材として広く安定的に提供され、国民の食卓に並ぶほか、その風味を活かした加工品などの開発や海外への輸出など大きな市場を生むことが考えられる。
現在、4ヶ所の試験地のうち2ヵ所で子実体の発生が確認されている。研究グループでは、今後、これらの栽培環境を比較してトリュフの安定的な発生に適した栽培条件を明らかにするとともに、栽培から収穫に至るまでの作業工程を検討して実用化に向けた研究開発を進めていくとしている。