厚生労働省は2日、アレルギー疾患への対策をまとめた初の指針案をまとめた。患者がどこに住んでいても適切な治療を受けられるよう、地域ごとに基幹となる拠点病院を定めて、かかりつけ医と連携する医療提供体制を整備する。
厚労省によると、日本ではアトピー性皮膚炎や喘息、花粉症といったアレルギー疾患の患者が急増。現在は、乳幼児から高齢者まで、国民の約2人に1人が何らかのアレルギー疾患を持っているとしている。
指針では、アレルギー疾患について、有病率の高さから国民の生活に多大な影響を及ぼしているうえ、原因の特定が困難なことが多いと分析。一方、インターネットには、「疾患の原因やその予防法などがあふれ、優れた情報を選択することが非常に難しくなっている」としつつ、利用する際には「適切でない情報をもとに、症状が増悪するケースもある」としている。そこで、今後は国と関係学会が連携して必要な検査や治療など正しい情報を提供していく方針だという。
さらに、アレルギー疾患医療は、診療科が内科や皮膚科、耳鼻咽喉科、眼科、小児科など多岐にわたることが多い。そのため、アレルギー疾患に携わる専門的な知識や技能を持つ医師が偏在していることが、地域間格差の大きさ要因の1つになっているとした。
厚労省は、アレルギー疾患の治療で専門性の高い医師のいる医療機関を拠点病院に指定。国立成育医療研究センター、国立病院機構相模原病院など全国的な治療拠点のほか、地域の病院やかかりつけ医らとの連携体制も強化する。拠点病院の要件や具体的な連携の仕組みについては、検討を重ねていく。治療にあたる医師、薬剤師、看護師といった医療関係者の知識や技能の向上なども図っていく考えだ。
■ 教職員の研修実施も求める
また、子どもの患者に関しては、「症状の悪化や治療のための通院や入院を余儀なくされ、時として成長の各段階で過ごす学校などで、適切な理解や支援が得られないことがある」と指摘。アレルギー疾患を持つ幼児・児童・生徒がほかの子供たちと分け隔てなく学校生活を送るため、教育委員会などに適切な指導を実施する必要があるとしている。学校のアレルギー疾患に対する取り組みガイドラインや学校給食における食物アレルギー対応指針等を周知し実践を促すとともに、学校の教職員などに対するアレルギー疾患の正しい知識の習得や実践的な研修の実施も求めている。
■ 災害時の食事や受動喫煙の対応も盛り込む
そのほか、指針では
・災害時のアレルギー用ミルクや対応食の確保
・受動喫煙の防止等を推進し、気管支ぜん息の発症と重症化を予防
・関係学会がサイトで公開しているアレルギー専門の医療従事者や専用医療機関の情報を患者やその家族、一般の医療従事者に提供
‐といった項目も盛り込んだ。